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濁浪清風
 生命の根源からくる、ささやきのような「呼びかけ」ということを先月書いてみた。自分としては、すこし表現が象徴的すぎるかなとも感じたのであるが、「宗教的要求」を表現しようとすると、若干なりとも象徴的にならざるを得ないのである。これを、もうすこし近い感覚で表現するなら、生命力の根源にある大自然の力とも言えるかもしれない。
 あらゆる生命現象の根底にはたらいている根本的な力とでもいうべきもの、物質的な分子の連鎖からなぜこういう生命力が出てきたのかは、おそらく今後も解明することはできないのではないか。この大自然が生み出した生命現象のいとなみの一部に、人間といういのちが生まれ、その末端に、いま「自分」という存在がここに与えられている。一個の存在として生まれ落ちてあることも、その存在を取り巻き、その存在に先立って連綿として相続してきた生命の歴史も、いわばはるかに自己を超えた大自然のはたらきであろう。
 そういう背景によって自己が与えられ、支えられているにもかかわらず、私たち人間は、自分のいのちは自分の「所有」に属するものとして、「自我」の思いの範囲にあるものとして、感覚する。それを疑うということすらしない。それを「自力の妄念(もうねん)」と気づいたのが、「他力の教え」の出発点だったのではなかろうか。そして、自己のいのちを、自分の所有と感ずることを立場にした場合に避けることができない難関を突破したのではないか。
 もし、妄念に気づかず、自分の所有として自己を感ずる「自力」の場合には、自己の中にある「弱点」「劣悪性」「愚昧性」「卑怯さ」、さらには自己のいのちの無意味性というようなものを、なんとか覆い隠して自己を納得しようとするしかないのであろう。しかし所詮、根本的な自己認識が誤っているのであるから、どこかで虚偽を感じざるを得ない。事実、そうではなかったのだ。根源にはたらくものは、大自然の絶対信頼とでも言うべきおおいなる背景の力であり、そこから見直すなら、あらゆる欠陥も自己を具体的に与え、支えているいのちそれ自身として、手を合わせて、頂ける道が見えてくるということなのではなかろうか。(2004年9月)
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