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Vol.06  ロック・ギタリストのジミ・ヘンドリックス(ジミヘン)が亡くなったのは1970年のことである。ホテルの部屋で睡眠薬を多量に飲んで嘔吐(おうと)し、窒息死したのだった。
 大学生のころ、夜おそくまで友人たちとしゃべっていて、さて腹がすいたので近くのコンビニまで車で出かけた。その車中、FEN(今のAFN。在日米軍向けの英語のラジオ放送。音楽が多い)から、当時すでに亡くなっていたジミヘンの曲「Little Wing」(1967年作)が流れてきた。深夜の闇の底から、きらめく星のごとくにエレクトリック・ギターが響いてきた。その瞬間、ステージに立てば何万もの人に取り囲まれもする彼が、たった一人で音楽を作っているそのさまが、ありありと思い知られた。
 有名になったジミの周辺を、金銭欲とセンセーショナリズムもまた取り囲み、ジミは外聞と享楽の対象となった。そしてジミ自身が性欲とドラッグに浸りもした。だがしかし、そうしたものの中にあって、それらを超えて、彼は天から降り来る音楽を表現することができた。だからこそ、彼は自分の音楽を「Electric Church(エレクトリックの教会)」の音楽と呼んだのだ。その音楽は正真正銘の自由と愛とにねらいをつけていった。だが、彼がそこで自己を表現し得たロック界は、現代社会の惑乱のこの上ない縮図でもあって、愛を実現するには最悪の場所でもあった。
 悲しいとき彼女が来てくれて「幾千もの微笑(ほほえ)み」で私を自由に飛び立たせてくれる、と「Little Wing」は歌う。彼の死を思いやるとき、これは自分の葬送の曲を、魂を鎮(しず)める歌を、自分で作って置いたかのようなものである。ジミヘンの音楽は、ただその壮絶な死にざまに相応しているだけではない。それを超えて、運命と共に鳴り響きながら、聞く者を厳粛な気持ちに誘うことができるのだ。
 睡眠薬を大量に服用する、そんなことがないように、そういう精神状態を救うために、人はいろいろと手を尽くすことができるし、そうすべきである。だがジミヘンという一人の人間にとっては、時はもう遅すぎる。しかしジミヘンの音楽は、この遅すぎることを救いとる響きを奏(かな)でる。驚くべきことである。遅すぎるとは人の事である。救いとるとは天のことである。だからこの響きが、広い意味で宗教的と言いうるようなものを感得させるのであろう。

越部良一(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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