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keyword:アインシュタイン、原発、原爆、平和、ナチス・ドイツ、湯川秀樹、ビキニ原水爆実験、反戦
Vol.107 アインシュタインの遺言―人間を生きる― 法隆誠幸
 以前、ある機関紙に『ラッセル・アインシュタイン宣言』というものが紹介されていた。大量破壊兵器たる核兵器を用いた戦争の惨害(さんがい)と反人間性、それが人類絶滅の危機へとつながるものであることを切々と訴えたその『ラッセル・アインシュタイン宣言』は、行動的な自由主義者・人道主義者として一貫して反戦平和運動の先頭に立ったイギリスの思想家バートランド=ラッセル(1872‐1970)と、ナチスの迫害を避けてアメリカに亡命していた高名なユダヤ人物理学者アルベルト=アインシュタイン(1879‐1955)が中心となって、1955年7月9日にアメリカ・ソ連・イギリス・フランス・中国・カナダの各国首相に向けて発信した、いわば警告書である。その結びの言葉が先の機関紙に引かれていたのである。

『私たち〔宣言署名者。※その11人の中には湯川秀樹<ノーベル賞受賞物理学者>も含まれている。〕は、人類として、人類に向かって訴える―あなたがたの人間性を思い出しなさい。もし、それができるならば、道は新しい楽園へむかって開けている。もしできないならば、あなたがたの前には、全面的な死(全面的な破壊)が横たわっている』(松下彰良訳:〔 〕は筆者補足)


 この宣言には、当時最先端の科学技術に携わっていた物理学者たちの危機感があらわれているように思う。「あなたがたの人間性を思い出しなさい」、そうまで言わなければならなかった、それは絶体的危機感である。
 その前後の歴史に目を向けてみると、1954年3月1日にはビキニ原水爆実験(“死の灰”という言葉が有名である。)が行なわれ、日本の漁船第五福竜丸が被爆している。後に死者を出すこととなったこの事件は、やがて原水爆禁止運動に対する意識を爆発的に高めていくこととなる。現に、これを機に東京都杉並区の主婦たちから始まった運動は世界的な広がりを見せ、1955年8月には原水爆禁止世界大会の第一回目が世界唯一の被爆国である日本の広島で開催されている。1957年4月には西ドイツの原子科学者18名が核実験・核兵器の開発反対、核兵器研究の拒絶を訴え、同年7月には、ラッセル・アインシュタインの提唱により、カナダのパグウォッシュで科学と国際問題に関する会議が開催され、ミュンヘンにおいても湯川秀樹・朝永振一郎両博士が核兵器の危険と廃絶を訴えている。
 はたして、「あなたがたの人間性を思い出しなさい」という、その“人間性”とは何であろうか。『ラッセル・アインシュタイン宣言』が提起された1955年は、奇しくもアインシュタインが亡くなった年でもある。物理学者として生きた者の最晩年の言葉、それは彼の遺言と言ってもよいだろう。科学・技術とは、人間の知的好奇心と知的探究心による発見・産物である。しかし、自分が発見してしまったものの恐ろしさにアインシュタインは気づき、驚き、その前にたじろいだのではないか。彼が用いた“人間性”という言葉を単に良心であるとか、倫理であるとか、そのような深度で理解することは、私にはどうにもはばかられる。むしろそうではなく、自らの発見が不本意にも人を狂わせ、他のいのちの営みを奪ってしまう…。その罪の自覚こそが彼自身が人類に問うた“人間性”であり、畢竟(ひっきょう)、人間の愚かさの自覚ではないだろうか。そこに、「人間を生きる」ことの普遍的問題が横たわっている。アインシュタインが発見したのは相対性理論であり、その普遍的問題だったのかもしれない。これはあくまで私見であるが。

法隆誠幸(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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