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Vol.127 格闘技とエッセイの書き方 ステファン・グレイス(親鸞仏教センター 嘱託研究員)

 今、命懸けの試合の真最中である。それは博士論文を書くことこの試合に勝利をおさめて、いつか大学の教授になりたいと思っている。それが現実になったら、授業初日のセリフを何回も頭のなかで練習してきた。面白くない話で学生たちを苦しませるのは申し訳ないが、ぜひとも「格闘技とエッセイの書き方」について話したい。

 やはり、エッセイのなかでエッセイの上手な書き方について語るのは、本当に恐ろしいことで、自分の額にターゲットを描いたように、直ちに批判の対象になると思うのだが、覚悟して続けたいと思う。

 大昔の出来事のように感じるが、地元のニュージーランドで学士論文を書いていたころ、その指導はあまり良くなかった、という印象が残っている。いや、正しく言えば、先生は、それまで出会った人のなかで最も頭の良い人の一人だったが、その知識を割って与えることは苦手だったのだ。私の学士論文の場合、内容はいうまでもなく、書き方、スタイルなどに関しても、質問はすべて禁止された。そして、結局提出したエッセイは小学生のレベルを超えてないように感じて、また、それにふさわしい点数をもらった。

 一番心痛いことは、「怒り採点」だった。エッセイ用紙が殺人事件現場のようなシーンとなって、一所懸命強く紙に押し付けられた赤ボールペンそのものまでも可愛そうだった。先生の額に、漫画のように「カンカン印」が燃えながら、「俺の教えた子はこんな下手なものしか書けないのか!?」と叫んでいたことを私は想像した。最初から、先生の無言の理由が私にはわかっていたが、それは私個人には何の役にも立たなかった。やはり、先生が試行錯誤をさせたかったのでしょうが、「素人なのにプロボクシングの試合に出ろ」と言われているような気持ちだった。私はボクシンググローブを付けて、リングには入ったが、そこから習ったのは、恐怖と恥しかなかった。

 どうにか卒業できて大学院に進むと、そこでの指導教官に言われたのは、「「知識」というのは、人に与えるものじゃないが、「技術」は、教えてあげるよ」という言葉であった。そして、「読み方」や「点の打ち方」について教えてくださった。そして、先生のおかげで、東京大学へ進学することになった。

 大雑把にいうと、格闘技では、グレイシー兄弟(ブラジル柔術)やミルコ・クロコップ(元警察官)のように「テクニカル」に闘う人のほうが成功する。攻撃の瞬間を読めたり、効果的に反撃したりするために、その技術を長年に渡って磨いていく。他方、その次によく勝つタイプは「痛み」や「諦め」を知らない、野獣のように闘う人なのだ。彼らをエッセイを書く人に喩(たと)えたら、テクニカルな選手が「正式な修行を受けた学生」となり、そして野獣が「学問的な超天才な学生」に当たるだろう。もちろん、もっとも強く勝つのは、マイクタイソンのようにその二つの特徴をもつ人だ。

 格闘技の道場と同様に、エッセイを書く技術を習わずにプロと闘おうとすれば、ほとんど間違いなくボロボロに負けてしまう。そして、学問の世界でも、先生(コーチ)がどんなに教えるのが上手でも、学生を天才にすることはできない。しかし、この世のなかのすべての動体的または知的な活動と同様に、エッセイの上達方法は、訓練と復習にかぎる。一般の人でも技術を覚えたら、ほとんど誰でも勝者になることができる。

親鸞仏教センター嘱託研究員 ステファン・グレイス

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