親鸞仏教センター
お問い合わせ
 
「現代を生きる人々」と対話するために
HOME親鸞仏教センター概要アクセスサイトマップ
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内ブックレビュー
 HOME > 今との出会い
keyword:死、死者、関係性
Vol.137 死を受け止める力 大谷一郎(親鸞仏教センター嘱託研究員)

 先日、ある新聞の特集で、現代社会では死を受け止める私たちの力が弱くなっているのではないか、という記事を目にした。それは、近い人が突然亡くなったとき、その死を受け入れられず、精神的に深いダメージを受けてしまう人が多くなっているのではないかということだ。現代社会は死というものを忌み嫌うべきものとしてなるべく隠そうとしてきたのは事実だろう。また、息を引き取るのは自宅でなく病院でというようなことが一般的になり、身近な人の死さえも感じづらくなっている。このように日常生活のなかで、死を肌感覚で感じられなくなっていることがその原因の一つかもしれない。

 しかし、東日本大震災以降、死、死者に対する人々の認識が少し変わってきたのではないかと思う。いとうせいこう氏の「想像ラジオ」や、よしもとばなな氏の「スウィ―トヒアアフター」など「死者」を主人公にした小説が出てきたり、また、評論家の若松英輔氏は死者論を展開し、死者と生者との関係を問い直すなど、正面から死者と向き合おうとしている。死者と生者の新しい関係性を模索した動きだと思う。

 考えてみれば、今自分が生きているこの状況は、無数の死者の歴史のうえに成り立っていることに気づかされる。現在生きている人間が、死、死者に目をつむり、死者の声に耳を傾けることなく、自分たちの生を謳歌(おうか)することばかり考えていること自体不自然なことなのかもしれない。

 若松氏は、死者は実在である、と言い切る。


死者は抽象的な概念ではない。実在である。ここでの死者とは、私たちのなかにある、亡くなった人々の思い出ではない。その人々は、「死」の後も臨在する不可視な隣人である。(中略)私にとって、死者論とは、生者がいかに死者と共に生きるか、あるいは生きているかを問うことである。」
(『死者との対話』P.67)

 そしてその実在は、悲しみをとおして感ぜられるものだという。

 死を受け止める力とは、言葉を変えれば、死者の言葉、絶えず語りかけてくる亡き人の言葉に静かに耳を傾け、応答し、死者と生者の新しい関係性を作っていくことではないだろうか。

親鸞仏教センター嘱託研究員 大谷一郎

最近の『今との出会い』一覧
Backnember ページトップへ
濁浪清風今との出会いブックレビュー
研究活動報告出版物紹介講座案内バックナンバー一覧
親鸞仏教センター
MAP
親鸞仏教センターfacebook

親鸞仏教センター [真宗大谷派]<br>〒113-0034 東京都文京区湯島2-19-11
TEL 03-3814-4900 
FAX 03-3814-4901 
mail:shinran@higashihonganji.or.jp
 
掲載の記事・写真の無断転載を禁じます
Copyright©The Center for Shin Buddhist Studies. All rights reserved.
ホーム 親鸞仏教センター概要 講座のご案内 スタッフ紹介 バックナンバー一覧 リンク サイトマップ アクセス