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keyword:生きづらさ、価値観
Vol.141 時代の濁り 親鸞仏教センター嘱託研究員 法隆 誠幸

 新年を迎え、はや一ヶ月が経ちました。「明けましておめでとうございます」と、年初に交わしたとりあえずの挨拶も、随分前のことのように感じられます。年末年始の小休止を終え経済が回りだした途端、喰って、稼いで、寝るだけの生活が再び始まり、足早に今日一日が過ぎていきます。街往く人びとの表情は何となくこわばり、鬱屈(うっくつ)した暗さが滲(にじ)んでいるようにも見えます。

 誰もが生きづらい時代です。少し前の新聞に気になる見出しがありました。「子供に向精神薬 処方増」(2015年1月13日『読売新聞』朝刊)。記事によれば、医療経済研究機構と国立精神・神経医療研究センターなどが行なった初の全国調査で2002年〜2004年と2008年〜2010年とを比較したところ、13歳から18歳の子どもに対する注意欠如・多動症(ADHD)に使う治療薬の処方件数が2.49倍に、また統合失調症などに使う抗精神病薬が1.43倍に増え、さらに6歳から12歳でもADHD治療薬が1.84倍、抗精神病薬が1.58倍に増えていたことがわかったということでした。そのほかにも、抗うつ薬、抗不安薬・睡眠薬などの異なる向精神薬が一人の子どもに対し複数処方されているケースが多いことも、記事は伝えていました。

 少子化が叫ばれているにもかかわらず、子どもに対する向精神薬の処方件数が増えているとは、一体どういうことなのでしょうか? およそ、考えうることは二つあると思います。一つは、何らかの原因により先天的に精神疾患を抱えて生まれてくる子どもの割合が近年、急速に高まっていることです。もし、これが本当であれば、医学的見地からの原因究明が急がれなければならないと思います。なぜなら、今後も精神疾患を抱えて生まれてくる子どもの割合が高くなり続けるであろうことが予想されるからです。もう一つは、かつては受容されていた子どもたちの行動が、近年、親を含む周囲の人間から拒絶されるようになってきたことです。つまり、精神疾患と認識される枠が次第に広がっているということです。極端なことを言えば、扱いづらい子どもは精神疾患であるという、そのような見方が社会から積極的に支持されているということになります。前者の場合と異なり、これは社会問題として考えられるべき事柄です。

 そもそも、子どもに対し向精神薬の処方件数が増加しているということは、世界的なことなのでしょうか? 仮に、精神疾患かどうかの判断基準が各国まちまちであれば、画一的な人格しか認めない国柄であればあるほど、当然、患者数も増える傾向にあるはずです。例えば、他国では正常とされる子どもが、ある国では注意欠如・多動症と判断されてしまうわけです。

 大人には大人の世界があるように、子どもにも当然、子どもだけが理解しうる世界があり、その世界を生きることで、ようやく大人の世界への階段を登りはじめる心の土台ができるのだと思います。その子どもの世界を真っ向から否定し、大人の価値観・世界観に当てはめてしまうことは、まったくもって子どもの心の成長にとって何のプラスもありません。まして、大人の世界にあてはまらない子どもを病人のように扱い、薬で矯正しようとしているとすれば、これは非常に恐ろしいことです。忘れてならないことは、私たち大人も、子どもであったときがあり、子どもの世界を生きていたということです。子どもは大人のおもちゃでもアクセサリーでもありません。澄んだ心をもっている一人の命ある人間であるということを、現代に生きるわれわれ大人は改めて考えなおさなければならない地点にきているように感じます。そして、生きづらい時代を創り、あるいは間接的に支持しているのがわれわれ自身であることも、もっと自覚されるべきことなのではないでしょうか。

法隆 誠幸(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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