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目からウロコ
Vol.148 見えていないことばかり 親鸞仏教センター研究員 藤原 智
 最近読んだいくつかの本について。もちろんそこには私の知らないことが書いてあるのだが、それ以上にそれらの本に共通している著者の訴えというものが感じられた。これを私の言葉で代弁するならば、おおよそ次のようなことになるだろう。

 取り扱っているテーマは、現代において重要だと人々に共有されてある事柄。けれども、そこにはどのような事態が実際にはあるのかについてはあまり知られていない。ただ、漠然とこのようなものではないかという安易なイメージだけが先行しているが、それは実態とは大きな隔たりがある。だからこそ、細かい議論は別としても、基本的な事実だけは知っておいてほしい。そして、自分で考えてほしい、と。

 このようなことは特別なことでなく、さまざまな分野において感じられていることと思う。当たり前であるが、一人の人間があらゆることに精通しているなどということはありえないし、ましてやたった一冊の本を読んだだけで何かがわかった気になってしまったとしたら新たな過ちを犯すことにもなろう。ただ、あえてこれを述べているのは、今さらながら私自身にあらためてそのように聞こえてきたからにほかならない。それは、これまで意識を向け、考えたりしてきた事柄について、実は知りもせず、知ろうともしていなかったのだという反省として、である。
 言ってみれば、ある事柄が自分にやってきたとき、一応納得できる内容であればそれでよく、そして一度納得できてしまえば、むしろそれを揺さぶるような情報は聞きたくない、というのが自分の姿なのであろう。要は、端的でわかりやすい答えを求めていることになる。しかし、その答えとは、決して単純ではない実態というものを覆い隠す罠(わな)にほかならない。
 自分のなかの安定性(たとえそれが欺瞞〔ぎまん〕であったとしても)を求める点からすれば、余計な情報を忌避しようとする。では自己が揺さぶられるのが苦痛かといえば、実際にはそうではない。むしろそれは世界が広がったという喜びと感じられる。いわゆる目からウロコが落ちたというのだろうか。ただし、そこに見える光景が心地良いものであるとは限らない。悲惨な光景も多いであろう。とはいえ、それを知らなかった以前に戻りたいかというと、そんなことは決してない。今にして思えば、それは固く閉ざされた身動きのとれない世界でしかなかったからである。
 自分には見えていないことばかりである。知ったかぶりをするでもなく、知らないことに居直るのでもなく、ただただ自分が揺さぶられるような場に身を置く。そして、今この世界のここにこうしてこの身があるということを、考えていきたいと思うことである。

藤原 智(親鸞仏教センター研究員)

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