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本当の幸せ、楽しみ
Vol.150 諸行無常のなかで 親鸞仏教センター嘱託研究員 法隆 誠幸
 しばらく前、電車に乗っていると二人組みの女性(Aさん、Bさんとしよう)が乗り込んできた。60歳前後かと思われるAさんは、もう一人の女性Bさん(70代半ばくらいだろうか)を気遣い、空いていた私の隣席に座ることを促した。少したって、Bさんの隣が空くと今度は自分が座って二人は静かに話し始めた。

 Aさん:「Aさんはいつもお元気そうで……。何か特別なことをなさっているの
      ですか?お洋服も素敵ですけど、Bさんの若さの秘訣は何ですか?」
 Bさん:「今日のお話しにあったけど、やっぱり教育と教養ね。」
 Aさん:「そうですか。家でじっとしているのが一番良くないっておっしゃっていまし
      たね。」
 Aさん:「だから私、ほとんど家に居ないわよ。いろいろと用事をつくって、友だちと
      食事に出かけたり、主人とゴルフに行ったり……。孫とディズニーランド
      にも行くの。」
 Bさん:「まぁ!それは素敵ですね。」

 若さの秘訣が教育と教養? そのことと食事やゴルフに何の関係があるのだろう? 不思議に思って聞いていると、その後の話しの流れから「教育」が「今日行く(ところがある)」であり、「教養」が「今日、用(がある)」であることがわかった。つまり外に出ることが若さの秘訣、ということのようであった。おそらく何かのイベントか、誰かの講演を聞いてきた帰りなのだろう。少しだけ着飾った二人の女性はしばらくしてその電車から降りていった。
 たまたま隣の席に座った、見ず知らずの人たちの何気ない会話。しかし私にとっては、なぜだかとても気に掛かる会話であった。何より「それは素敵ですね」という言葉が、何となく腑(ふ)に落ちなかったのである。

 ある程度自由に使えるお金があって、夫婦仲も良好で、孫にも恵まれていることは幸せである(はずである)。きっと彼女たちと同じくらいの年代の方々が二人の会話を聞けば、そのように感じたのかもしれない。実際、会話には華やかさがあり、喜びがあった。けれどもそれと並行するように、覆い隠せないむなしさとさびしさ、そして救いのない悲しみがにじんでいるように私には感じられた。「それは素敵ですね」という言葉が、何となく腑に落ちなかったのは、つまり人生を「楽しみ」で押さえようとすることへの違和感である。

 「何が人間にとって本当の幸せなのか?」この問いにまっすぐに向かって答えられる人はいるのだろうか。一見華やかで、順風満帆に見えることが永遠に続くものではないことは誰もが知っている。老いて、病んで、ひとり死んで往かなければならないということも知っている。すべてのものは移ろいゆくという、諸行無常の道理そのものである。ただそのことに気がついていないという振りを、私たちはお互いに装っているだけだ。誰かが悪いわけではない。二人の女性が特別なわけでもない。むしろ、安心して年を重ねることが難しくなってしまった、若さを強要してくる時勢の被害者なのかもしれない。
 「もし私が彼女たちと同じくらいの年齢になったら、何を想って過ごしているのだろう?」そんな疑問がふっと浮かんできた。 

法隆 誠幸(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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