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keyword:地名と文化
Vol.34:「無個性」的な地名と人々?  春近 敬  私は地図とそこに書かれた地名を見ることが好きだ。そのような私にとって、地名が書き換わる「平成の大合併」に関するニュースは、目下最大の関心事である。
 さて、その大合併の過程で、大空町(北海道)、さくら市(栃木県)、つくばみらい市(茨城県)、中央市(山梨県)、四国中央市(愛媛県)など、合併前からあった地名をあまり意識しない自治体名が登場している。「南セントレア市」なる新市名案が物議(ぶつぎ)を醸(かも)したことも記憶に新しい。この新しい地名について、その土地の伝統や文化を無視した「無個性」な地名であるとの批判もある。
 「地名とは、その土地の風土と歴史が蓄積されたある種の文化遺産であり、無個性の地名を新たにつけることは文化破壊に等しい」――このような意見が叫ばれて久しいし、私も同意しないではない。
 しかし、「無個性」的な地名の登場はそれほど最近の話でもない。目立った例では、戦後のニュータウン造成の際に生まれた「希望ヶ丘」「緑が丘」「ゆめみ野」などの地名があり、実は戦前にも「大正」「昭和」「大和」「美里」「共和」「日の出」といった地名が各地に誕生している。これらは、当時は「無個性」的な地名であったかも知れないが、年月が流れてさまざまな歴史を経験することで、現在では立派にその土地を表す「個性」をもった地名として存在している。
 忘れてはならないことは、「緑区」でも「みずほ台」でも、地名はどうあれ、そこに人が住まい集う場所があれば生身の人間が生まれ、学校に通い、家族と喜怒哀楽を共にし、そして大人になり人生を重ねていくということである。地名は「無個性」かもしれないが、そこに生まれ育った人々にとっては、それぞれに「個性」的な生活があり、文化があるのだ。
 その土地に根づいた伝統や文化を守り、継承していくことは、言うまでもなく大切なことである。しかし一方で、その土地での生活を通して、新たな歴史と文化を培(つちか)っていくという営みも存在する。この両方をひっくるめた生活の集合体こそが、その地域の「文化」なのではないだろうか。“伝統や歴史を「守る」ことも、新しく「培う」ことも、その主体は地名や伝統名ではなく、それを担(にな)う人間にあるのだ”とは、東京のベッドタウン・埼玉県の巨大団地と新興住宅地に囲まれて育った私の感じるところである。
 とはいえ、あまりに耳慣れない新造語や、安易な平仮名書きの地名に対して違和感を覚えることもある。金沢市で行われている旧町名の復活運動や、滋賀県でのことだが、合併後の市名が一度は「西近江市」に決まったものの、住民の声で『万葉集』以来の地名に変更された高島市の例などを聞くと、少しだけほっとしたような気持ちにもなる。この地名に対するアンビバレントな思いを抱えながら、大合併の進展とその後に培われるであろう「歴史」に注目をしていきたい。


春近 敬(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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