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Vol.49:夜明けに笛吹く者たち 越部良一  『The Piper at the Gates of Dawn』というのが、ピンク・フロイドというロックグループの1967年に出たデビューアルバムのタイトルである。このアルバムのほとんどの曲は、後に精神を病んでグループからぬけたシド・バレットが作っているのだが、シドという人の童話好きの様子からして、Piperとは、あの『ハーメルンの笛吹き』を連想させずにおかない。1967年という年には、ロックの世界では、もう多くの笛吹きたちが、子供たちをどこかへ連れ去ろうとしていた。
 ロック界で、最初に夜明けに笛を吹き始めたのは誰か。私の知る限りで言うならば、1965年のビートルズのアルバム『ラバーソウル』のジョン・レノンである。その最初の曲(「Drive My Car」)での彼の低い歌声は、誤解されるのを承知で言えば、「邪悪な」音色を、まちがいなく自覚的に響かせている。
 1965年といえば、ビートルズは世界を制覇(せいは)して、「成功」の絶頂にあった。成功とはすなわち、多くの人々に賞讃され、一生困らない大金を手にしたということである。たいていの人は、それを幸せとみなし、それを求める。だがジョンは、そこで居場所を失い、そこから撤退しようとする。しかも、これも誤解される言い方だが、「ずる賢い」やり方で。例えば、「Nowhere Man」という曲で、I am〜と歌わずに、He is a real nowhere manと歌うように。しかし、このアルバムは、聞こえる者には聞こえるであろう、という様子をしている。つまり「成功」のただなかにいても消え去ることのない自己の孤独が。
 成功からの撤退を願う成功者なるものを、成功者に群がる人々は理解しないから、この者はまわりに怒りと憎しみを抱かざるをえない。「邪悪」とはそのことである。もしそこで撤退を平和的になし遂げたいならどうするか。自分をオブラートで包まねばならない。「ずる賢い」とはそういう意味でもある。しかし、ジョンはただそれだけにとどまらない。彼は平和の大道をいこうとし、それが、このアルバムの「The Word」という曲で歌われる。それは、居場所のない者を誘う言葉であり、いったいどこへ子供たちを連れ去ろうとするのか、の答えである。「その言葉」、それはLoveであり、それがSunshineなのだと。
 しかし、この道はひとすじにはいかない。それは、「Love or Confusion」(ジミ・ヘンドリックス)、そしてConfusion will be my epitaph(「Epitaph」キング・クリムゾン)と歌われる道ともなる。ジョンが1980年に、「私たちは生きのびた」と言ったのは、この道が精神病院(狂気)と監獄(犯罪)と墓場(死)に接してもいたからである。生きのびるのは、不思議な僥倖(ぎょうこう)と言わざるえないところがあったのだが、この年、God, bless our love(「Grow Old With Me」) と歌った後、ジョンは凶弾に倒れた。この世とはそういうところである。だから笛吹きたちは永遠に、いつまでものぼることのない太陽をまちながら、それでも夜明けに笛を吹き続ける。

越部良一(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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