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Vol.71:育児の成功 田村晃徳  書店に通うことが好きな人であれば、ここ数年で本棚に陳列されている雑誌の種類が変わったことに気付くだろう。それは育児雑誌の、ことに男性向けの育児雑誌の充実である。私も父親として、あるいは仕事上の必要からも関心があるので、立ち読みはもちろんだが、特集によっては購入もする。内容も、いわゆる早期教育を推奨するものばかりではなく、多岐にわたっており、参考になることも多い。父親の育児参加の重要性が叫ばれて久しい。このような雑誌の充実は、世のニーズを受けてのものだろう。
 父親の育児参加が重要なのは言うまでもない。私は自戒を込めて育児をしない父親を「いくじなし」と秘かに呼んでいる。帰りの遅い日が続くと「いくじなし」の自分が見えてきて、思わず苦笑してしまう。そんな父親達に、雑誌の特集はたくさんの参考意見を与えてくれて、良き父親になるための心構えなどを教えてくれる。しかし、それでも私はそのような雑誌の特集に違和感を覚えることが多くある。それは「成功する〜」や「失敗しない〜」などの文字が並ぶことがあるからだ。全体として成功する育児を目ざしているのだ。
 育児の成功が悪いはずはない。親なら誰もが願うことだろう。よく冗談で「ちゃんと育児しておけばよかった」といった類のことを聞くが、それも親の願いの裏返しである。ただ敢(あ)えて問いたいのは、育児が成功したと決めるのは一体誰なのか? ということだ。親? しかし、前回のエッセイ「さびしさの行方」でも指摘したように、日本の子どもたちは世界で一番寂しいと感じている。親が敢えて子どもたちを寂しがらせるようなことはしない。だからおそらくは子どもたちがその様に感じていることを知らない場合もあるだろう。つまり、親は成功したと思っていても、当の本人である子どもたちはそうは思っていないかも知れないのだ。
 また、いつの段階で育児の成功と見るか、によっても変わってくるだろう。いい大学やいい会社に入れることだろうか。しかし、新聞などを見れば分かるように、有名大学や有名企業に入っても、悪事をはたらくことはある。もちろん、一人の成人した大人がやったことだから、その親が悪いわけではないだろう。しかし、親からすればあんなに一生懸命育ててやったのに、何故……という後悔の念はおこるのではないだろうか。また、さらに重要なことは、いわゆる高学歴をはじめとした、人生のキャリアと、人生の充実度はべつであることもまた自明なことだ。つまり、私が言いたいのは、育児を単純に成功や失敗という形でとらえることは、案外難しいのではないか、ということである。
 4月8日は釈尊の誕生日(花まつり)である。釈尊の父、スッドーダナ王は悩めるシッダールタ王子の内面を理解できなかった。そしてシッダールタ王子は出家してしまい、父の望む次期国王となることはなかった。これは一見、育児の失敗例に思える。きちんと言うことを聞くように育てておけば良かった、という後悔があったかもしれない。しかし、そのような出家があったからこそ、仏教が開かれ、人類は救いをあたえられた。その意味では育児は大成功であったとも言えよう。育児も人生も成功は一つではないのである。

田村晃徳(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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