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Vol.73:人間の罪業性 本多雅人  近年、ハクビシン(ジャコウネコ科)が、都内に出没するようになり、寺院や住宅の天井裏に住みつき社会問題化している。実は拙寺もハクビシン被害にあった。天井裏に多量の糞尿による悪臭を撒(ま)き散らし、足音の騒音にも悩まされた。また、木や木材にも鋭い爪あとが発見され、どうにもならなくなり、専門業者に依頼してハクビシン駆除に動き出した。ハクビシンは体長が50〜60cmほどもあるのに、どういうわけか3cmほどの隙間でもいとも簡単に侵入してしまうので、ありとあらゆるところをふさがなければならず、また天井裏の清掃と消毒、さらには断熱材の交換等もしなければならないので大変であった。
 とりあえず、これでハクビシンの侵入を防ぐことはできたが、実は多くのことが問われていることに気がつかされた。拙寺には侵入できなくなったが、それはハクビシンが他の住居に移るということにすぎないのである。つまり今度は他の住居が狙われるのである。以前、オウム真理教が問題になったころ、「オウムよ、出て行け」という看板をよく目にしたが、その町から出て行ったオウムは別の町に入り込むだけだと思ったものだが、実は自分も同じことをしているではないかと気づいたとき、深いため息とともに罪悪感に苛(さいな)まれた。また、ハクビシンが、人間に危害を加えるからといって捕獲して殺すことは動物保護団体からクレームがつくばかりでなく、それ以前に「鳥獣保護法」により、捕獲することすら禁止されている。ということは、もしハクビシンを捕獲したとしても、結局はどこかに放しにいかねばならず、そのハクビシンは、再び住みやすい住居を求めて都内に姿を現すことになる。人間に都合の悪い動物を殺すこともおかしな話だし、かといって被害に対して指をくわえて見ているわけもいかない。結局、全住宅がハクビシン駆除対策をしなければならないということになる。でも、もしそうなった場合、ハクビシンは最終的にはどこへ行くのだろうか。
 そもそもハクビシンは山地や丘陵地帯の雑木林に住み、柿やみかんなどを食べ、生息していた。ところが自然破壊が進んだ結果、住処を失ってしまったのである。ここにも近代以降の人間の傲慢(ごうまん)なあり方が潜(ひそ)んでいたのである。大量生産、大量消費を善として、つねに発展を目指して歩んできた私たちは、ついに生物が生きていく環境をも破壊してしまった。目の前のハクビシンの動向に右往左往する私たちであるが、その根にある私たちのあり方こそ見直さねばならないだろう。ここに深い人間の罪業性を見ることができる。ハクビシン対策に躍起になっているこの私自身が実は、「こんな環境に誰がした?」とむしろハクビシンから問われていたのである。ハクビシンこそ被害者である。
 「共に生きよう」とか口にするのは簡単であるが、それも傲慢というものではないか。まず自分こそが環境を破壊しているのだという深い悲しみを持もつことができるかどうかだろう。つまり罪業性、加害性を自覚することである。そのことによってしか、本当の意味で環境問題に真向かいになって取り組むことができないのではないだろうか。「罪悪深重の凡夫よ」という如来の呼びかけに頷かされる。

本多雅人(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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