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keyword:宿業・業縁
Vol.78:「原爆の図」に思うこと 大谷一郎  2009年4月5日、アメリカのオバマ大統領はチェコのプラハで演説し、米国は、「核兵器保有国として、そして核兵器を使ったことがある唯一の核兵器保有国として行動する道義的責任がある」とし、核兵器のない世界を目指して具体的な方策を取ることを宣言した。だが、一方で北朝鮮のように必死で核兵器の保有国になろうとしている国もあり、その実現には多くの困難があるだろう。
 第二次世界大戦後、アメリカと旧ソ連は東西冷戦のなかで多数の核兵器をつくり出してきた。そして現在の核保有国はイギリス、フランス、中国、インド、パキスタンなどであり、その数は人類を何回も全滅させるほどであるともいわれる。人類は自らを滅ぼすに充分な兵器を自らの手で創り出してしまったのだ。
 私の家(埼玉県東松山市)の近くに丸木美術館という小さな美術館がある。そこには、日本画家の丸木位里、俊夫妻の「原爆の図」が展示されている。丸木夫妻は広島の原爆で肉親や知人友人の多くを失い、そして、その原爆投下直後の惨状を1950年から30年あまりに渡り「原爆の図」15連作として描き続けた。先日、その絵のことを思い出し、30数年ぶりに丸木美術館を訪れた。「原爆の図」の前に立つと、本当に圧倒された。原爆投下直後の凄まじい状況が身に迫ってきて鳥肌が立った。その地獄のさまは、人間の仕業(しわざ)とは思えないほどである。しかし、原爆を創り出したのも、それを広島や長崎に落としたのも、戦争で中国大陸へ進出し、多くの人々の命を奪ったのも、自分と同じ人間なのだ。
 『歎異抄』第13章で親鸞聖人は、人間の「宿業(しゅくごう)」ということを問題としている。「宿業」とは、現在存在している自分を、自分たらしめているものは無数の背景や条件であり、そのことに気づき、受け止めるということである。それは、心が悪であるから人を殺し、優しく善良であるから人を殺さないのではなく、「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもす」るのが人間であり私自身なのだ、という事実に気づかされることである。そしてそのようにしか生きられない自分の存在に気がついたとき、本当に慙愧(ざんき)し、懺悔(さんげ)せざるを得ない。
 「原爆の図」からは不思議に「怒り」は伝わってこない。感じるのは静かな「哀しみ」である。それは丸木夫妻の、人間存在の奥底にある罪業性への思いを、私が感じるからなのかもしれない。

大谷一郎(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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