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keyword:きっかけ 考え方 上司
Vol.81:上司の言葉 法隆誠幸  新年を迎えたのはつい先日のことのように思っていたが、気が付いてみれば、今年も早一ヶ月が過ぎている。「光陰矢のごとし」、とはよくも言ったものである。否応なく過ぎて行く月日の速さを実感するとき、しばしば私はかつての上司の言葉を思い出す。
 大学を卒業した私は、とあるメーカーに就職した。約一年に及ぶ本社・工場での研修を終えて配属された先は、北海道の営業所であった。その地には、知人友人などひとりも居らず、一緒に赴任する同期もいない。大きく変わる環境、いよいよ本格的に始まるサラリーマン生活、そして営業という仕事に、私は新たな期待と、それを打ち消すほどの不安を抱きながら、そのドアを叩いたことを昨日のことのように覚えている。
 赴任した翌日、その日は朝から営業会議があった。会議終了後、先輩方はその間にかかってきた電話の用件を処理すると、上着を羽織り、バックを片手に、皆慌(あわ)ただしく出かけていく。そして、事務員以外に誰もいなくなったところで、所長は私を呼び、次のようなことを言われた。
「取りあえずひと月、お前は何もしなくていい。電話も取らなくていい。自分の席に座って営業ということを考えろ。そして、考えたことを俺にレポート用紙に書いて提出してくれ。いいか?これは毎日だ。あとは、退社時間になったら帰っていいからな。」
 驚いてしまった。一応はひととおりの研修が終わり配属されたはずである。しかし、そう言われては何もすることもできず、しばらくの間、出社してから退社時間まで、ただ椅子に座って考えるという日々が続いた。先輩方が慌ただしく動き回っていようが、かかってきた電話が処理しきれずに鳴り響いていようが、である。
 初めは良かった。取りあえず、レポートとして書く事も十分にあったし、先輩方も「何しているの?」と聞いてくる程度で、事情を話すと「ふ〜ん」という感じで受け流してくれていた。しかし、時に、止まない電話の音に、我関せずでいることには何だか気が引けた。それに、考えろと言われてもずっと座っていることにも飽き飽きとしていたし、考えているだけでは不安でもあった。何か仕事がしたいな…、そう思い始めていた。しかし、レポートを提出しても、相変わらず判子を押して返されるのみである。
 そんなある日、所長が「外出するから車を運転してくれ!」という。案内に従い車を走らせていると、しばらくして、路肩に停車しろという。無言のままどれくらい時間が流れただろうか、所長は煙草を燻(くゆ)らせながら、おおよそこんなことを話してくれた。
「考え方が変われば行動が変わる。行動が変われば結果が変わるんだ。世の中に営業マンはゴマンといる。でも、一流の営業マンと呼ばれる人はほんの僅かしかいない。ほとんどの営業マンは馬鹿ばっかりなんだ。そいつ等は売っているんじゃなくて、売れているだけ。分かるか?考え方が変わらないなら、何十年営業をやったって同じなんだ。お前も一流の営業マンになりたいと思わないか?」
 その上司を離れて、もうすぐ10年。「何十年営業をやろうが…」、それが最近では人間の思考性を問うた言葉のようにも聞こえてくる。"考え方が変われば行動が変わる。行動が変われば結果が変わる。"それは今も私の人生を支えている、大切な言葉だ。

法隆誠幸(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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