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keyword:希望、戦争、原発、震災
Vol.99 「希望」を超えて 法隆誠幸

 『若者を見殺しにする国』という本が、少し前に朝日文庫より発刊された。著者は、「『丸山眞男』をひっぱたきたい―31歳フリーター、希望は戦争」という論文を『論座』(2007年1月号)に発表した、赤木智弘という方である。「希望は戦争」という、その刺激的な表題もさることながら、固定化された社会に対し流動性を求め、ポストバブル世代の代弁者のごとく論壇に訴えかけたその内容に、幾人もの著名な論客が応答し、著者は再び「けっきょく、『自己責任』ですか―続『「丸山眞男」をひっぱたきたい』『応答』を読んで」という文章を同誌に執筆している。
 その詳細はさて置き、「希望は戦争」という言葉がひとりの人間から吐かれたことに、当初、私は戸惑いを覚えていた。おそらく、<ふつうの人間>は彼の発言に率直な違和感を懐くだろう。あるいは、「あなたは戦争の悲惨さを知らないからだ!」と声を荒げ、嫌悪感を示すかもしれない。しかし、著者が投げかけた「希望は戦争」というかつての問いは、今日まで地鳴りのように、この国の深層に響き続けている。そう感じさせたのは、前掲書『若者を見殺しにする国』の「あとがき」だった。
 3.11の震災後に書かれたそれには、「あらためて「希望は戦争」と対峙してみる」という副題が添えられてある。そして、その書き出しで著者は「かつて「希望は戦争」と言った私にとって、大震災は希望となったのか。」と自問し、「その問いには「いいえ」と答えるほかないでしょう。」と自答している。そもそも、著者が『論座』に掲載された論文を通じて訴えかけたかったことは、「多くの人が死ななければ社会が変わらないとしか思いようがない日本社会の状況に幻滅していた」ということ、「希望は戦争」と望まざるをえなかったのは、その意味においてのことである。
 それに続く次の発言が興味深い。「いまこの国には「この災害を日本の転機にするぞ」という意志が、あちこちに渦巻いています。日本社会がこの震災さらには、原発危機によって生まれた「日本復興」というスローガンに、大きな「希望」を抱いているように見えます。しかし、その希望は一種の「ゆがみ」を含むように見えるのです。」
 はたして、「希望は戦争」という彼の言葉を本当に批判することができるのだろうか。震災は大転換への千載一遇のチャンスなのだろうか。先の発言を読んで、私はあえて自分自身に問うてみたくなった。9.11を傍観し、3.11を経験しても、なお目をそらし続けているものがあるのではないか。そこから透けて見えてくること、悲しむべきことは、同時多発テロ、原発震災が私たちの時代の、あくまでもひとつの到達点だったという事実である。
 根本が問われないまま、全体が変わるということはない。それはすなわち、人間とは何か、そのことが<ふつうの人間>一人において課題となる、そのことに尽きるのではないだろうか。「希望」を超えて…、いま憶うことである。

法隆誠幸(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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