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親鸞仏教センター通信
第66号 September 2018
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或る捨身の記録から

親鸞仏教センター研究員 青柳 英司
 国の名は唐。都は長安。そういう時代の話。
 善導という僧が寺の中で説法をしていると、ある人が問いを出した。
「念仏をすれば、必ず浄土に往生できるのか?」
 善導は答えた。
「必ず往生できる」と。
 すると、その聴衆は念仏を称えながら寺の門を出て、柳の木の上に登ると、西を向いて合掌し、そこから身を投げて死んだ。
 仏道のために身を捨てた美談として、この事件は後世に伝えられている。しかし「ある人」は、どうしてこんなにも性急に、往生を求めねばならなかったのだろうか。また、善導はこの出来事をどのように受け止めていたのだろうか。当時の資料は、何も伝えていない。
  翻(ひるがえ)って現代の日本においても、この娑婆世界を厭(いと)う人は決して珍しくない。特に八月の末から九月にかけては、十八歳以下の自殺が最も多い時期だという。夏休みが終わって、学校の人間関係の中に戻ることが、死ぬよりも苦しく感じられる。そういう若者が、少なくないのだ。
 我々は善くも悪くも、他者との関係の中を生きている。そこにはもちろん、親鸞における師・法然との関係のように、大きな喜びを伴うものもあるだろう。
 しかし、逆の場合もある。他者の言葉が、他者の評価が、他者の眼差しが、自分にとって苦しみでしかないこともある。善導に問いを発した「ある人」も、もしかすると同じような苦悩を抱えていたのかもしれない。
 ただ善導は、死んで浄土に往生すれば全て解決すると、安直に考えていたわけではないだろう。善導自身も投身自殺を遂げたとする伝承もあるが、それは近年の研究によって、後世の創作であることが明らかとなっている。事実、善導の著作中に、自殺を奨励するような記述は見られない。
 むしろ善導が身を捧(ささ)げたのは、浄土の教えを他の人々へ伝える実践にだった。「同じく浄国に帰して、共に仏道を成ぜん」(『観経疏』)と述べているように、善導にとって浄土は、独りで生まれていく世界ではない。他者との間に「共に往生を願う」という関係を志向させるものとして、善導は浄土の教えを捉(とら)えていたのである。もちろんそれは、浄土を説けば他者との関係がすべて上手(うま)くいくという、安易な話ではない。ただ善導にとって往生を願うということは、現実から逃避することではなく、他者との関係を築いていく意欲そのものであったことは事実だろう。
 私も他者との関係に一喜一憂しながら、それでも共に仏教を聞いていきたい。
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