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親鸞仏教センター通信
第78号 September 2021
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自己を問うてくるもの

親鸞仏教センター研究員 谷釜 智洋
 明治末期、東京本郷の浩々洞にあった清沢満之のもとに、自己の問いに悩める若者らが集い、教えを聞いた。清沢の「本位本分の自覚」という文章には次のようにある。

自己を知るものは能く他を知ることを得るも、自己を知らざるものは決して他を知る能はざるなり[……]而して其自己を知ると云ふは、決して外物を離れたる自己を知ると云ふにあらず、常に外物と相関係して離れざる自己を知るを云ふなり[……]  (岩波版『清沢満之全集』第6 巻、342頁)

 ここで清沢は、自己を知らない者は他を知ることはできないと述べ、他との関係を離れることができない自己について説明している。浩々洞に 集った当時の青年たちは彼の言葉に何を思ったのだろうか。

  時も場所も違うが、青年時代の私にとっても、アイデンティティのことは人並みに問題事であった。昔から自身の由縁を探ったり考えたりするこ とが多かった。父が住職の傍ら勤めていた兼業先が東京であったことから、自坊には、お盆、報恩講、および正月の時期くらいしか滞在できなかった。 しかし帰省している間は、本堂内陣の荘厳を眺めたり、後門から古びたものを探してみては、寺の成り立ちなどに思いをめぐらせていた。

 高校生の頃、日本以外にルーツをもつ友人もいた。彼ら彼女らの話によく耳を傾けた。異文化への憧れ、好奇心もあった。ただ、彼ら彼女らのい だくアイデンティティに対する葛藤や苦悩には、私の理解が及ばない場面もしばしば訪れた。今思えばこういった経験が「私は何者なのか」と向き合う更なる契機になった。

 大学生時代の個人旅行は、ありがちな「自分探しの旅」であった。海外に行くことも何度かあったが、ことさらネパール旅行には期待をしていた。 自分のアイデンティティに仏教からの影響を感じ、釈尊降誕の地として伝えられているルンビニには何か得るものがあると考えたからだ。巡礼の 季節と重なったこともあり、現地は多くの仏教徒の巡礼者であふれ、礼拝や読経がおこなわれていた。私にとって心象にすぎなかった仏教のあり方を上回る現地の風景にただ圧倒された。何か得るものがあるのでは、という現地に赴く前の期待は叶わず、むしろ仏教、そして身近に思っていた真 宗さえ理解していないと実感するだけだった。

 自身の経験を省みると、常に外にのみ自己を求め、ふり回されてきた。しかも、外と自己の関係についても十分に考えてこなかった。それゆえ清 沢の言葉に重みを感じる。単に他に求めるのではなく、他と自身の関係をみつめながら、自己を問うてくる清沢の言葉にあらためて向き合いたい。
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