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親鸞仏教センター通信
第79号 December 2021
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「モノ」と幸せ

親鸞仏教センター研究員 藤村 潔
 先日、PCの電源が入らないトラブルに見舞われた。以前からバッテリーやアダプター機器の調子がよくないと思っていたが、論文の提出と自分が担当したオンライン研究会を終えた翌朝であった。かなり動揺して、急ぎ電器店に向かい修理を依頼したところ、事なきを得た。

 この時、自分の中で不思議な気持ちが込み上げた。仕事とはいえ、PCにどれだけお世話になり、常に起動してもらったのか、と。確かに私自身が情報や思索などを色々と打ち込んでいる。しかしそれを可視化してくれる「モノ」はPCに他ならない。そのため、故障した瞬間、残念であると同時に、何か申し訳ない気持ちに駆られた。休むことなく私の仕事を絶えず支えてくれていたからである。

  モノである以上、壊れたら買い替えればよい。頭ではそうはわかっているが、なかなかすぐには割り切れないこともある。衣服を躊躇なく棄てる場合もあるが、たとえば僧侶にとっての使い古した法衣となれば、そうはいかない。時には畳みながら「有難う」という気持ちを抱くことさえある。そこには、モノを単にモノと軽んじることなく、自己との関係から成り立つ「モノ」、…そんな思い入れも強いのだろう。そのように、愛着をもったモノと共に過ごした時間はかけがえのない至福の時であったに違いない。

 2012年6 月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで国連会議が開催された。テーマは人間社会の発展と貧困問題。各国首脳によるスピーチがされた中、アルファベット最後の頭文字「W」である南米ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカが演壇に立った。各国のフロアにむかって口を開き、8 分間の演説が始まる。世界の持続可能な発展と貧困をなくすことがテーマであったが、その「発展」や「貧困」の概念について彼は疑問の声を上げる。「貧乏とは、欲が多すぎて満足できない人である」と言い、物質社会による消費や浪費の「幸福感」を否定したのである。そして彼は「私たちは発展するために生まれてきているわけではない。幸せになるためにこの地球にやってきたのだ」と主張した。

 仏教では「少欲知足」というが、人間にとって真の幸せとは何か。多くのモノに充たされることに幸せを感ずることもあるが、一方でまた、ひとつひとつのモノに愛情をそそぐことも幸せの形であろう。そして何より、衆縁和合の只中に我が身を置き、モノの恩恵を受けていると実感するのも、ひとつの幸せではないだろうか。すべてが無常である、「生住異滅」の四相であるからこそ、一時のモノの存在は有難いのである。
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