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親鸞仏教センター通信
第30号 June 2009
[巻頭言]カイロモン的存在
親鸞仏教センター研究員 山本 伸裕
 フェロモンと呼ばれる生化学的信号物質が、同種の生物の個体間ではたらく誘引物質であることはよく知られている。それに対して、カイロモンなどと呼ばれる、異種個体間に作用する誘引物質が存在するという。たとえば、私たちはどうして孔雀の羽を美しいと感じるのか。これはあまり正確な言い方ではないけれども、そこに孔雀と人間とに共通して美しいという感覚を呼びさますカイロモン的な何かが存在していると考えることができる。
 これから一大転換期を迎えるであろう人類にとって、人間もまた「カイロモン的存在」であるといった自覚をもつことの大切さを提唱するのは、社会学者の見田宗介氏である。20世紀の人間にとって、森林などは基本的に伐採の対象としか見なされなかったといって過言ではない。しかし、目の前で森林が実際に切り崩されていく光景には、多くの人が少なからず心の痛みを感じるものなのではないか。
 森林は、人間にとってもの言わぬ他者であって、人びとはそこに畏敬(いけい)の念すら抱いたものである。なぜ、多くの人は、森林をむやみに切り崩してはならないという心の声を聞くのであろうか。それは、人間という生物にとって、理性的あるいは合理的な判断をはるかに超えたところからやってくる、カイロモン的な何かからの呼びかけである、と受け止めることは、決して無意味なことではないのではないか。
 近代以降、経済活動を中心とした人類のさまざま活動は、いわばフェロモン的なるものに誘引されるかたちで展開されてきたと言える。そのことが私たち人類にもたらしてくれた恩恵は測り知れない。しかしながら、いまやその多大な恩恵が、人類のみならず地球上のあらゆる生物の危機の元凶であることが明らかになりつつあるのである。仏教的に表現すれば、「自利害他」の振る舞いが、結局のところ「自害害他」の結果をもたらしつつあるということであろう。
 人間もまた、カイロモン的存在であるという感性を取り戻すことは、自らのいのちのありようを、より広い視点に立って「空想」してみるということにほかならない。その際、どこにそのような物質があるのかといった問いは、ほとんど無意味であると言いたい。カイロモン的存在である人間が、美しいものを美しいと感じ、ときにはそこに言い知れぬ畏敬の念すら抱いてしまう。大事なことは、その畏敬の念の源泉を物質的に突き止めることではなく、それについてどこまでも思いを馳(は)せ続けることなのではないか。そうした「空想(イマジネーション)」だけが、地球上のあらゆるいのちあるものの価値についての、どこまでも開かれた問いかけを可能にしてくれるであろう。
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