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親鸞仏教センター通信
第36号 December 2010
[巻頭言]真宗学
親鸞仏教センター研究員 花園 一実
 昨年まで私は京都にある大谷大学の真宗学科に所属していた。この「真宗学」とは、一般的に耳なじみの薄い言葉であると思う。その語感から、多くの人は一宗派の教義学を想像されるかもしれない。つまり、宗祖である親鸞聖人の思想を研究対象とし、その内容を明らかにしていく学問が真宗学であると。しかし、かつて金子大榮は『真宗学序説』(文栄堂)の中で、次のように述べられた。「親鸞聖人の著述を研究するのは真宗学ではなくして、親鸞聖人の学び方を学ぶのが真宗学である」。この言葉は、一度でも親鸞の思想に触れた者ならば、すべからく見失ってはならない大切な指標である。この「学び方を学ぶ」とは、単に方法論を学べということではない。それは親鸞という、真実を求めた一人の求道者の姿勢、生き方に学ぶということであって、その際に手がかりとなるべきものが『教行信証』等の著作なのである。つまり思想を通して、その人の精神や問題意識に触れていくことこそが重要なのであって、そのための手段と目的が入れ替わってはならないことを強く思うのである。
 親鸞仏教センターの研究員になり、はや四ヶ月が過ぎようとしている。なぜ、今このようなことを改めて確認するのかといえば、センターを通じてさまざまな有識者の方々と対面していく中で、このセンターにおいて行われる活動が、まさに真宗学というものを基盤とするものでなければならないことを、私自身が強く感じているからである。何か一つのことを専門的に学んでいけば、そこに必ず自負心が生まれ、自分なりの解答を作り上げてしまう。しかし、親鸞の思想と現代の問題を切り結ぼうとするとき、このような「答え」を前提とした、「答え合わせ」 のような姿勢で臨もうとすれば、それは決して対話とならない。私たちは親鸞の思想の中に何か万能なる「答え」を妄想するのではなくて、親鸞が何を見て、何を悲しみ、何を問題としていたのか、その「問い」に学ばなければならない。その「問い」が、現代を生きる一人ひとりの目の前にある「問い」と連結されることによって、そこに真宗学というものが、はじめて公開されるのではないかと思うのである。そして、そのプロセスを踏むことこそが、多様化、複雑化していく現代の問題に対して、親鸞の思想が向き合うことのできる、唯一の手だてであると確信する。教えというものが移り行く時代の問題に応えうるのは、その時代時代を生きてきた人間の苦悩や悲しみをくぐって、絶えず表現され続けてきたからに他ならないからである。
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