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親鸞仏教センター通信
第47号 December 2013
誰か故郷を想はざる
親鸞仏教センター研究員  名和 達宣
 今年、没後30年を迎えた寺山修司は、故郷を憶念し続けながら、その生涯に詩や小説、戯曲など、数多くの作品を遺した。彼は「憎むほど愛していた」という故郷を離れ、東京へ移り住んだ後に自叙伝を著した。書の名前は『誰か故郷を想はざる』。
 故郷というのは不思議なもので、離れて暮らし始めた途端、無性に懐かしく想えてくる。むしろ、離れることによって初めて実感されると言うべきだろうか。その一方で、帰省の際には、たどり着く前から「故郷に着いた」と感じることがある。車窓から見慣れた風景が飛び込んでくれば、もうそこに故郷は到来している。場合によっては、「さあ帰ろう」と出立した瞬間に、その感覚が訪れることもある。どうやら故郷とは、ある一定の地点を指すわけではないようだ。どれほど離れ、忘れていようとも、ふとした瞬間、心の奥底に呼び覚まされるもの、それを「故郷」と名づけることができるのではないだろうか。
 一昨年の大震災を境に、多くの人々から「故郷」を求める声が湧(わ)き起こった。その声は単なる憧憬(どうけい)の念、特定の地域への想いという意味にはとどまらない。生まれ育った土地から離れる決断をした者はもちろんのこと、全国どこにいようとも、いかなる立場や境遇にあろうとも、深さは違えど誰もがあのとき、「故郷」を喪失した感覚に陥ったのではないか。われわれの存在を支える大地、生きる依(よ)り処(どころ)が、根底から揺り動かされたのである。その悲しみを忘れてはいけない。まして安易な慰(なぐさ)めや一体感、急進的な仲間意識へと、転化させてはいけないだろう。
 浄土真宗はその名のとおり、浄土を「生きる依り処(真宗)」とする仏道である。それゆえ、浄土は「存在の故郷」(安田理深)という言葉で受けとめられあるいは「まだ見ぬ真実の国であり、同時にまた懐かしき魂の郷里である」(金子大榮)と言い表されてきた。われわれはその世界をまだ見ない。しかし、名となった呼び声、名号を聞くところにおいて、忘却の彼方(かなた)から呼び覚まされると教示される。そのことが『浄土論註』(曇鸞)には「国土の名字仏事をなす、いずくんぞ思議すべきや」と説かれるのである。
 誰か故郷を想はざる。懐かしき存在の故郷とは、死に往く先にある世界ではない。どこまでも今、このわが身に「名/声」としてはたらき、「ここ」で生きる意欲を与えるものである。
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