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親鸞仏教センター通信
第51号 December 2014
空気を読む
親鸞仏教センター研究員 名和 達宣
 小学生のころ、巷でミネラル・ウォーターが流通し始めた。蛇口をひねれば水は流れる。なぜ、わざわざお金を払ってまで買わなければならないのか、と疑問に思った。しかし、今やペットボトル水は、日常の生活に欠かせないものとなっている。いつのころからか、水道水の飲用を極力避けるようにもなった。当時、クラスの友人たちと「将来的には空気も売られる日が来るかもしれない」と冗談めいて話していたが、酸素の販売や空気清浄器の流行など、すでに現実化されつつある。生活必需品となる時代の到来も、決して遠くはないだろう。
 その一方で、思春期に入ったあたりから、猛烈に感じ出した問いがある。
 ――この息苦しさは何だろう。
 空気とは本来、人間を「活かす」もののはず。ところが、時にわれわれは、その空気によって自分を失い、生の実感が損なわれてしまう。それは、同調圧力や仲間意識、暗黙の了解というかたちで身に迫り、有無を言わせず、周囲の空気を読むことが強要される。そこに生じる息苦しさは、吸えないことよりもむしろ、安心して吐けない、あるいは「本音」が押し殺されるところに起因するのではないだろうか。
 今から百十余年前、東京本郷の地に浩々洞を結んだ清沢満之のもとへ、時代のはざ間で煩悶(はんもん)する多くの青年が集った。彼らは明治という新時代の空気に取り残されまいと必死だった。自由と平等を謳(うた)う思潮に乗じ、立身出世を志しながらも、誰もが自らの境遇に落ち着くことができなかった。そして、家族や社会との関わりのなかで倫理上の問題に喘(あえ)いだ。そのような、言わば呼吸困難に陥った煩悶青年たちに、清沢は「倫理以上の安慰」を説いたのである。ある者はその一言によって「深い海底から浮かび出たような気持ちになった」と述懐する。それゆえ、浩々洞には「特別の空気」が流れ、「議論と大笑いの僧伽(サンガ)」とも称されるような、安心して「本音」の吐ける場が――真宗の本尊を中心に――展開されたと伝えられる。
 現代においてわれわれは、伝記や評論などの書物をとおして、ある時代のある場所に、確かに「僧伽」が存在したという事実を知らされる。しかし、そのことが過去の事績への憧憬(どうけい)や人物崇拝にとどまるならば、真にその書を読み解いたとは言えないのではないか。思想を学ぶとは、書物のなかに流れる「空気」を呼吸し、現前の境遇を生き抜くことでなければならないだろう。
 東京本郷の地に立つ当センターには、今も浩々洞からの風が吹いている。
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