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親鸞仏教センター通信
第67号 December 2018
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迷信と安心

親鸞仏教センター研究員 長谷川 琢哉
 「迷信」とは、一般に、合理的根拠を欠いた俗信などを指す言葉であるが、この言葉を広めたのは哲学館(現東洋大学)の創設者、井上円了(1858-1919)であると言われている。よく知られているように円了は、明治期の日本において「妖怪学」という学問を創始した人物でもあった。一見すると不思議に見えるさまざまな現象(円了はそれらを総称して「妖怪」と名づけた)を取り上げ、そのひとつひとつを科学的・合理的に解明し、それらが実は不思議に見えるだけの通常の現象であることを明らかにするのが円了妖怪学の手法である。円了においては、一般民衆の中で信じられているようなお化けや幽霊、占いやまじないの類は、すべて合理的根拠のない「迷信」として退けられる。それゆえ妖怪学は「迷信退治」とも呼ばれていた。
 こうした円了の妖怪学に対して、柳田国男が批判的な態度を示したこともよく知られている。柳田は民俗的な信仰の中には「国民の性質」が含まれていると考え、そうした信仰の諸形態を尊重しつつ研究する「民俗学」を創始した。だからこそ柳田は、「井上円了さんなどに対しては徹頭徹尾反対の意を表せざるを得ない」(『柳田国男全集』第31巻)と言うのである。柳田からすれば、合理主義的な円了のアプローチは、民俗信仰を破壊する悪しき啓蒙(けいもう)主義に見えたのだろう。
  しかしながら、円了の妖怪学には別の側面もあることを忘れてはならない。円了は「迷信は一片の迷心より起る」として、次のように述べている。

迷心とは安心の反対にして、物事の道理に暗く、自分の思ふ様に往かない時に、色々の妄想を起して迷ひ出すことであります、人に此迷心があるから、安心することが出来ず、安心が出来ぬから、益々迷ふ様になります(井上円了『妖怪研究の結果(一名妖怪早わかり)』)

 つまり「迷信」とは単に合理的根拠を欠いた俗信であるのではなく、人々を迷わせ、本当の「安心」を妨げる「迷心」から生じるものなのだ。とりわけ「自分の思ふ様に往かない時」などに、人は何かのせいにしたくなる。そのような迷う心の奥底に「妖怪」は現れる。その意味で、妖怪学は人間の迷いの心を徹底的に解明する心理学でもあった。
 ただし円了は、「生死禍福の門に迷はざることは、実に難中の至難」(同上)であることをよく理解していた。私たちが本当に「安心」するためには、不思議に見えるだけの妖怪を退けることにくわえて、「真怪」すなわち、本当の不可思議に出会わなければならない。この「難中の至難」を超えたところで、はじめて「宗教」は成立するのである。来年、没後100年をむかえる井上円了の妖怪学の意義について、私たちはあらためて考えるべきであるだろう。
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