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親鸞仏教センター通信
第74号 September 2020
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自分の足跡を消さない

親鸞仏教センター研究員 谷釜 智洋
 「自分の足跡を消さない」。大谷専修学院本科に学んでいた頃、狐野秀存学院長が講義の中で言われた言葉である。狐野学院長はこのことを、旋盤工で作家である小関智弘氏から学んだという。小関氏は、会社のストライキ運動への参加が理由で解雇され、転職するも過去の運動が原因で本採用には至らず、職場を転々としたという経歴の持ち主である。しかし、たとえ苦い水を飲もうが過去の経歴を隠さず、自分の意志を貫いた人であった。狐野学院長は小関氏の著作から「君は、どこにいるのか」と、問いかけられたという。

 その頃の私は、学問としての仏教や真宗学にほとんど縁がなかったため、難解な仏教用語をどのように理解したらよいのかがまったくわからず、もっと早くから仏教の勉強に取り組んでいたらと、それまでの生き方に後悔し、少しでもその穴を埋めようと焦っていた。このような私であったから、「自分の足跡を消さない」という言葉は素直には受け入れ難く、何を言わんとしているのか理解しようともしなかった。狐野学院長は同じ講義の中で、私達に次のように伝えた。

人が聞けば、何だ、と嘲りをうけるような自分の姿であろうとも、その何とも言いようのない惨めな情けない自分に、それでもじっと耐え黙々と歩んで来た自分自身の人生の足跡があります。辛い時は辛いままに、切ない自分を丸ごと抱き締めて、今、ここの、この私にまで地面を踏みしめて歩んで来ている本当の自分。「主体」というものがあります。親鸞聖人は、その真実の主体を法蔵菩薩として呼んで崇めたのです。 (「歎異抄講義」、2012年開講)

  以来、なぜかこの言葉は私の心に残り、折に触れこの講義を思い返すことがある。今思えば、ここにこの身が在るのは過去から現在までの自分が置かれた環境と行動の積み重ねの結果であり、当然どんなに消してしまいたいことがあろうとも、自分の足跡はけっして消せないのである。狐野学院長は、このありのままの事実の自分を受け入れることが主体性をもつということだ、と伝えようとしたのではないだろうか。このように考えれば、あの時に言われた「真実の主体を親鸞聖人は法蔵菩薩と呼んで崇めた」という言葉は、事実の自分を受け入れるということと、仏道を歩み始めた法蔵菩薩とを重ね、そこに主体的な求道の出発点があると親鸞は考えていた、と私達に伝えようとしたと想像される。これを実生活に置き換えれば「自分の足跡を消さない」ということを受け入れたその時から、主体性をもった真実の人生の歩みがようやく始まるのかもしれない。冒頭の言葉を思い出すたび「君は、どこにいるのか」と、私も問われ続けている。
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