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親鸞仏教センター通信
第75号 December 2020
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罪と救い―「阿闍世」からの想起―

親鸞仏教センター研究員 藤村 潔
 大学時代、卒業論文で何を書こうか迷っていた。あるとき、実家の父親に電話で相談したところ、「阿闍世について書いてみたらどうだ」と言われた。いま思えば、不純な動機ではあったが、その課題に取り組んだ。特に「罪と救い」という切り口から資料を調べ、原典を読み込み、思索した。論文を作成するなかで、昔の事を思い起こした。

 私の中学時代は、折しも阪神・淡路大震災やオウム真理教の事件があった頃である。その当時、忘れもしない出来事があった。私の同級生がイジメを苦に自死したのである。朝早く、母親が起こしに来たことを鮮明に憶えている。なぜその情報を知り得たかといえば、同級生の彼は寺のご門徒であったからである。小学校のときは、寺の子供会などによく参加した幼馴染み。彼は度重なる恐喝により、両親の財布からお金を持ち出しては、いじめた子に手渡していた。その日々に耐えきれず、自ら命を絶ったのである。当時の私は彼の置かれた状況に気づけず、その理由がわからなかった。ただ彼のつき合う友人が変わったという印象をもつくらいであった。その友人だと装っていたグループが、いじめた子らであったのである。このことは事件となり、その後、いじめた当事者らは「加害者」として社会的制裁を受けた。

  彼を失った喪失感は計り知れなかった。と同時に、複雑な気持ちもこみあげた。というのも、いじめた子の数人と私は、普段何気なく会話を交わす間柄であったからである。イジメの陰湿さに正直ショックを受けた。いじめた者が犯した罪、その事実に今でも私は憤りを覚えている。被害の深刻さが脳裏から離れることはない。私は京都の大学へ進学する頃まで彼の祥月命日に毎年欠かさずお参りに行った。その一方で、はたして罪を犯した者と共に救われることはないのか、という思いも不意に去来したのである。

 たまたま大学で仏教を学ぶ機会があり、「阿闍世」に関する卒論を提出した。いま思い返すと無意識とはいえ、イジメの事件を重ねていたように思う。『涅槃経』では、父親を死に追いやり、母を幽閉した五逆罪の阿闍世が、その後病床に臥してしまい、救われる道を完全に絶たれていた。その阿闍世に対して、釈尊は「阿闍世王の為に涅槃に入らず」と救いの声を上げたのである。「涅槃」を主題とする経典の中に、なぜ阿闍世の救いを説く必要があったのか。私にとって釈尊のクライマックスに罪と救いが描かれることの意味が判然としなかった。最も救われがたい存在が救われなければ、仏教の真理は成立しないというものなのであろうか。釈尊の明かした仏教の真理をどう受け止めればよいのか、極めて重い問いである。
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