親鸞仏教センター
お問い合わせ
 
「現代を生きる人々」と対話するために
HOME親鸞仏教センター概要アクセスサイトマップ
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内研究員一覧
 HOME > 研究活動報告 > 英訳『教行信証』研究会
研究活動報告
英訳『教行信証』研究会
 大拙の遺した文章はたくさんあるが、その共通点は「生きた文章」という表現に尽きる。大拙の生きた信仰がそのまま文章に反映されているのであろう。「文は人なり」という言葉は、まさに大拙、そして英訳『教行信証』にも該当する。今回もそのような文章を紹介したい。
英訳『教行信証』研究会報告⑮
      生きた宗教としての大乗仏教

親鸞仏教センター嘱託研究員
田村 晃徳

■ 普遍的救済
 英訳『教行信証』研究会を通じ、文章を精読してみると様々なことに気づく。その中で、大拙訳の特徴を一つ述べるのであれば、文字ではなく、文意を訳すことに重点があることが指摘できる。翻訳にはいくつかの方法がある。その中で私たちが想像しやすいのは原文と訳語を一致させる逐語訳であろう。しかし、大拙訳はそうではない。『教行信証』の字句を訳すのではなく、その意味するところを訳す箇所が見られるのである。過去にも述べたが、例えば「弘誓」に関する次の箇所がそうである。

   AS I HUMBLY reflect, Amida’s Prayer for universal deliverance is beyond myunderstanding.
   It is the great boat that crosses the ocean of impassability.

 これは『教行信証』「総序」の「竊ひそかに以おもんみれば、難思の弘誓は難度海を度する大船」の翻訳である。言うまでもなく、この文章から『教行信証』は始まる。その点でこの一文をどのように訳すかは、英訳『教行信証』全体に影響を与えるだろう。その時に「弘誓」がAmida’s Prayer for universal deliveranceとされているのは重要である。「弘誓」とは阿弥陀仏の本願が弘く、普遍的であることを指す言葉であり、直接的な字義に「救済」の意は含まれない。だが、大拙は「阿弥陀の普遍的な本願」と訳すのではなく「普遍的救済のための阿弥陀の本願」とすることにより、「弘願」の内実を顕現させたのである。このような動的な翻訳が、英訳『教行信証』の特徴であり、ひいては『教行信証』自体にも新たな生命を与えるものである 。

■ 「生きた」宗教
 このように大拙の翻訳には一つの躍動性が込められている。注目すべきは、そのような躍動的翻訳は、大拙の変わらぬ仏教観、ことに大乗仏教観から生まれていることだろう。それは「生きた宗教としての大乗仏教」という理解である。大乗仏教は仏陀の真の教えではないという非難に対して「このような不幸な仮説のせいで、生きた宗教としての大乗仏教の重要性は全く無視され続けてきた」(鈴木大拙著/佐々木閑訳『大乗仏教概論』〔岩波書店、2016〕、25頁)と述べるが、その原文、Outlinesof Mahāyāna Buddhism(1907年刊行)には次の通りにある。

   Owing to these unfortunate hypotheses, the significance of Mahāyānism as a living religion
   has been entirely ignored.

 このようなliving religionとしての大乗仏教理解は大切だろう。大拙は上記文章につづいてMahāyānism a Living Faithという節も設けている。「生きた信仰としての大乗」という意味であるが、このような「生きた」という感覚が大拙に保持されていたことは重要である。

 『大乗仏教概論』は、英訳『教行信証』の約60年前の出版である。しかし、その内容は本願などの理解をはじめ、後の著作、そして英訳『教行信証』にも大きな影響を与えている。今、述べたlivingについては英訳『教行信証』の「大行」=the great livingが想起されるであろう。英訳『教行信証』だけを読むとthe great livingには若干奇異な感じをおぼえ、それが過去に注目されてきた由縁でもある。しかし、大拙においてlivingとはその宗教に生命観があることを示すキーワードであった可能性がある。『大乗仏教概論』の読解は、英訳『教行信証』理解にも大きな影響を与えるのではないだろうか。英訳『教行信証』は、その著のみを読んでいても、真意は読解できない。大拙の過去や、翻訳当時の文献を読むことにより重層的に理解できる。その点で、英訳『教行信証』と『大乗仏教概論』の比較は、今後の研究すべきテーマだろう。
Backnember ページトップへ
公開講座 親鸞思想の解明 現代と親鸞の研究英訳『教行信証』研究会
清沢満之研究会 「『教行信証』と善導」研究会会 「三宝としてのサンガ論」研究会」研究会
聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会近現代『教行信証』研究検証プロジェクト
親鸞仏教センター研究交流サロン インタビュー
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内バックナンバー一覧
親鸞仏教センター
MAP
親鸞仏教センターTwitter親鸞仏教センターfacebook

親鸞仏教センター [真宗大谷派]<br>〒113-0034 東京都文京区湯島2-19-11
TEL 03-3814-4900 
FAX 03-3814-4901 
mail:shinran@higashihonganji.or.jp
 
掲載の記事・写真の無断転載を禁じます
Copyright©The Center for Shin Buddhist Studies. All rights reserved.
ホーム 親鸞仏教センター概要 講座のご案内 スタッフ紹介 バックナンバー一覧 リンク サイトマップ アクセス