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研究活動報告
英訳『教行信証』研究会
 英訳『教行信証』研究会は、現在、月例の輪読会において「行巻」の読解を進めている。今号では、研究会で浮かび上がってきた鈴木大拙訳の特徴の一端を、筆者の所感も交え報告する。
 また、2006年3月28日には、龍谷大学教授のデニス・ヒロタ先生をお迎えし、「鈴木大拙訳『教行証文類』にみられる親鸞思想の理解」をテーマに講義をいただいた。その詳細については、『現代と親鸞』第12号に掲載予定である。
*『教行信証』の引用は、『真宗聖典』(東本願寺出版部)、大拙訳の引用は、The Kyogyoshinsho: The Collection of Passages Expounding the True Teaching, Living, Faith, and Realizing of the Pure Land. (1973)による。大拙訳からの羽塚による試訳を〈 〉で示す。なお〔 〕内は羽塚による補足である。
浄土はなぜ
「荘厳」されているのか


親鸞仏教センター研究員 羽塚 高照
 われわれ日本人が、日本語で書かれたテキストの翻訳から何を学ぶのか。単に、『教行信証』の解釈を大拙に肩代わりしてもらうだけにとどまるべきではないであろう。大拙の翻訳には、彼自身の了解を通した鋭い洞察が含まれている。それをわれわれは問題提起として受け止め、『教行信証』の理解を問い返していくべきである。そこで本報告では、「荘厳」という言葉を大拙がいかに理解し、英訳したかという点を糸口として、浄土の意味を問い返してみたい。
 漢訳語「荘厳」のサンスクリット原語は、vyuuha、あるいは alaMkaara である。前者は「動かす」「押す」を意味する動詞uuh- に、分離を意味する接頭辞 vi がついた vy-uuh- からの派生名詞であり、「分配」「配列」を原意とする。後者は、副詞「十分に alamM」と動詞「なす-kR-」との合成語から派生した、「準備」「装飾」を原意とする名詞である。仏教において「荘厳」とは一般的に、仏国土や仏の説法処を美しく飾ること、また智慧や徳で菩薩が自身を飾ることも意味する。
 ただし、浄土の「荘厳」とは、単に物質的な対象を表すことをその目的とするのではない。この有限で相対的な世界(娑婆)に生き、感覚の対象世界にとらわれている私たちにも認識できるように、仏は具体的な形をとって現れ、浄土は物質的な描写でもって描かれるのである。大拙は、"A Preface to the Kyogyoshinsho (un-finished)," The Eastern Buddhist (New Series). 6-1, 1973 において、阿弥陀によって建てられた浄土の絶対性と経典に見られる物質的な描写との「矛盾」について、次のように述べている。
 「インド人の想像力は、全力でその〔浄土の〕壮麗さと美しさを描写した。(中略)しかし、浄土は、すべての衆生に対する『大悲』によって動機づけられた、菩薩の願心としての行いによって産み出された功徳である、と教えることを〔経典の〕作者は決して忘れなかった。(中略)その浄土の存在を、感覚的認識に縛られた人間 mortal に覚らせることは究極的に困難である。インドの天才は、あえて物質的に浄土を描いたのである。(中略)浄土におけるあらゆるものは、浄土の一般的な概念を象徴化する symbolize、あるいは特殊化する particularize ためにつくられ、配列されているのである。浄土とは、無限の無碍の光それ自身であり、人間の意識のプリズムを通して映し出された後では、無限の多様性をもった荘厳 vyu=cd=ab29ha へと分光する。」(pp. 19-21)
 もちろん、大拙も「荘厳」に対して、その原意に基づく、embellishment (p. 56)や adornment (p. 69)などの〈装飾〉を意味する言葉や、 dignity (p. 48 etc.)〈尊厳〉、あるいは "constituent parts" (p. 177 f.)〈構成部分〉などの訳語を充てることもある。しかし、大拙による「荘厳」の訳語の多くは、阿弥陀の本願のあらわれとしての意味を前面に押し出した表現がなされている。以下、そのうちのいくつかを例示する。
・釈迦牟尼仏(中略)無量寿仏の荘厳功徳を説きたまう。(p. 168、「行巻」・『論註』からの引文)
Shaakyamuni Buddha ... told his audiences about the particular merits characteristic of the Buddha of Eternal Life. (p. 29)〈釈迦牟尼仏が、(中略)「永遠の命」という名の仏のみが持つ特別な功徳について聴衆に語られた。>
・「畢竟(ひっきょう)」に二種あり。一つには荘厳畢竟、二つには究竟(くきょう)畢竟なり。(p. 197、「行巻」・『涅槃経』)
[T]here are two kinds of finality: medial and ultimate, (p. 68)〈媒介と究極という二種の畢竟がある。〉
・釈迦、極楽の種種の荘厳を讃嘆したまう。(p. 217、「信巻」・『観経義』)
Shaakyamuni praises and is delighted with all the inspiring effects of things in the Pure Land. (pp. 95-96)〈釈迦牟尼は、浄土における事柄のうち、あらゆる力づけるはたらきを賞賛し、喜ぶ。〉
・種種の功徳具足して、威徳広大清浄仏土を荘厳せり。(p. 226、「信巻」・『無量寿如来会』)
All kinds of meritorious deeds were performed, and the Buddha-land of awe-inspiring dignity and virtue was fully materialized. (p. 106)〈〔法処比丘により〕すべての賞賛に値する行いが成し遂げられ、畏敬の念を生じさせる尊厳と功徳としての仏土が、完全に具体化された。〉
・また向さきに観察荘厳仏土功徳成就・荘厳仏功徳成就・荘厳菩薩功徳成就を説きつ。この三種の成就は、願心の荘厳したまえるなり。(p. 233、「信巻」・『論註』)
Reference has already been made to inspecting the completion of merit as regards the three forms of actualization: the Buddha-land, the Buddha, and the bodhisattvas. They come from 「Amida」 Buddha's mind that prays [to save all beings]. (p. 116)〈仏土、仏、菩薩という、三種の具現化に関しては、功徳の完成の詳述についての言及はすでになされている。それら〔三種の具現化〕は、[すべての衆生を救おうと]祈る[阿弥陀]仏の心に由来する。〉
・かれ十方一切の世界に、三宝ましまさぬ処において、仏法僧宝功徳大海を住持し荘厳して、遍く示して、如実の修行を解さとらしむ。(p. 289、「証巻」・『論註』)
The bodhisattva presides over, maintains, and actualizes the great ocean of merit belonging to the Buddha, Dharma, and Sam=cd=ba74gha in all the worlds in the ten quarters where there is as yet no Triple Treasure. He thereby universally leads the people to understand the real practice of the Buddha-dharma. (p. 188)〈菩薩は、十方のすべての世界においていまだ三宝のないところで、仏・法・僧伽に本来ある功徳の大海をおさめ、護持し、具現化する。それによって、菩薩は、人々を仏法の真実なる実践が理解できるよう導くのである。〉
 浄土はなぜ「荘厳」されているのか。「荘厳」とは何か。いま大拙の訳語を用いて、この問いに答えようとするならば、次のように言うことができるであろう。すなわち「荘厳」とは、浄土の絶対性を直接認識することのできない私たちのために、それを〈具体化>・〈具現化〉し、私たちを〈力づけるはたらき〉を有し、私たちと浄土との〈媒介〉となるものである。「荘厳」とは、すべての衆生を救おうとする本願から湧き起こる、阿弥陀仏の〈特別な功徳〉なのである。
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