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研究活動報告
英訳『教行信証』研究会
  英訳『教行信証』研究会は、現在、月例の研究会において鈴木大拙訳『教行信証』「行巻」の読解を進めている。この通常の研究会に加え、2006年3月28日には龍谷大学教授のヒロタ・デニス氏を、2006年11月21日にはロンドン仏教協会理事の佐藤平氏をそれぞれお招きし、講義をいただいた。
 今号では、両氏の講義内容を紹介し、第5回報告とする。ただし、紙幅の都合上、ここでは両氏の講義のごく一部を筆者の言葉で要約できたにすぎず、詳細については、『現代と親鸞』に所収の、あるいは今後刊行の、研究会報告をご覧いただきたい。
真宗用語の英語表現
―さらなる理解を求めて―


親鸞仏教センター研究員 羽塚 高照
■鈴木大拙の「戦略」
 ヒロタ氏には「英語圏における親鸞思想―現代的理解と表現を求めて―」と題して、おおよそ次の三点についてお話いただいた。すなわち、1)大拙がどのように親鸞思想を英語で表現し、説明しようとしたのか。2)それが大拙の『教行信証』の英訳のうえにどのように現われているのか。そして、3)親鸞思想がもつ「言語性」の特徴と今後の西洋における真宗理解の展望と問題点、についてである。ここでは1)について、その内容を要約して紹介する。
 ヒロタ氏は、『教行信証』の英訳に加え、“The Development of the Pure Land Doctrine in Buddhism.” (The Eastern Buddhist, Vol. 3 No. 4, 1925)、“The Shin Sect of Buddhism.” (The Eastern Buddhist, Vol. 7 Nos. 3-4, 1939)といった、『教行信証』の翻訳より以前に書かれた大拙の論文も視野に入れながら、大拙が真宗を解説する際の「戦略」には、(1) 主体性を根本にして宗教のことを理解していこうとする態度、(2) 抽象的な概念ではなく、実際の人間のうえに起こる宗教的な経験を重視する態度、が看取できると言う。そして、これらの大拙の態度には、スウェーデンボルグ(E. Swedenborg, 1688-1772) の神秘思想や、ウィリアム・ジェイムズ(William James, 1842-1910)の『宗教的経験の諸相』(The Varieties of Religious Experience, 1902)―大拙が渡米中に出合ったであろう西洋思想―と重なる部分がおおく、大拙はそれらを刺激として、仏教に対する新しい表現を求めていったのであろう、と指摘する。
 また、大拙が親鸞思想を英語で表現しようとするとき、あるいは翻訳語を決めようとするときには、「真宗とキリスト教との比較」が意識されていたのではないか、とヒロタ氏は言う。つまり、「願」の訳語である prayer、「信」の訳語である faith など、キリスト教で伝統的に使われている言葉が翻訳にも使用されている場合、大拙には、たとえキリスト教の色が濃い言葉であってもそれは使ってもよい、という判断があったはずである。大拙は、それらの言葉を採択することによって、真宗のもつ普遍性を表そうとしたのである、と。
■表現と実在との距離
 佐藤氏には「真宗を英語で表現することの課題と可能性」と題して講義いただき、具体的な語彙(ごい)を挙げながら、真宗用語の翻訳の問題について、そして佐藤氏が試みておられる英語表現についてお話いただいた。
 真宗用語、さらに広く言えば宗教的な言語を翻訳しようとするとき、まず意識されるべきは、「表現と実存との距離」である、と佐藤氏は言う。そこで求められるのは、表現されている内容を自分自身の実存の深まりのなかで「再体験」すること、言い換えれば、自分自身の実存のなかで「咀嚼(そしゃく)」すること、である。もちろんこれは、親鸞思想や『御文(おふみ)』『歎異抄』などの内容を英語で表現しようとする場面に限られたことではなく、宗教的文献の正しい解釈を求めるときには常に出てくる問題である。
 講義では、「信心」「恩」「罪悪」「報土」「安心」「功徳」「本願」「大行」という、いずれも親鸞思想を理解するうえでは欠かすことのできない、きわめて基本的な―それだけにわれわれが意味を問い返すことをしようとしないような―言葉に対して、ときにはこれまで使用されている翻訳語の問題点を指摘しながら、ときにはサンスクリットの原義にまで遡(さかのぼ)りながら、それぞれの言葉の意味、そしてそれが指し示そうとする内容を慎重に尋ねていった。そして、佐藤氏が試みてこられたそれぞれの英語表現を紹介していただいた。いま数例を示せば、「信心」には faith を使うが、ただし、親鸞の「信心」には「目覚め」(awareness)ということが含意されていることをきちんと説明しながら、これを使うこと。あるいは、「報土」は従来、“land of recompense” とか“land of fulfillment” と訳されてきたが、これでは何のことか理解してもらえない。そこで、「報土」とは、「法蔵菩薩が願に報(むく)いて阿弥陀仏として自らさとりの果を愉(たの)しみ、他の衆生もその果を愉しむことのできる国土」のことであるから、それを一言で “land of enjoyment” と訳してみること、などである。
 佐藤氏は長年、真宗を表現しようと努めてきたご自身の経験から、本当の意味を探求する「謙虚な」態度の必要性を強調する。テクニカルタームだけをそのまま濫用していては、宗教文献の内容を理解することはできないし、ましてやそれを人に伝えることなど不可能である。わかっているという「思いあがり」をいったんゼロにして、表現された宗教的言説が自分にとって何を意味するのか、という主体的な思索をしながら進んでいかなくてはならないのである。
ヒロタ・デニス(Hirota Dennis) 龍谷大学教授
1946年、アメリカ・カリフォルニア州に生まれる。カリフォルニア州立大学バークレー校文学部卒業。同大学院修士課程修了。文学博士(名古屋大学)。日本浄土教専攻。71年来日。『The Collected Works of Shinran』(親鸞著作全訳・解説、本願寺出版社)の主任を務める。ハーバード大学世界宗教研究所客員研究員、国際日本文化研究センター客員教授、ハーバード大学客員教授などを歴任。著書に『親鸞=cd=ba52宗教言語の革命者』(法蔵館)、『Asura's Harp』(親鸞思想と哲学的解釈学、U. of Heidelberg)。論文に「親鸞の言語観」(『思想』871号)など多数。
佐藤 平(さとう たいら) ロンドン仏教協会理事
1939年、大分県に生まれる。62年、京都大学文学部卒業後、64〜66年、鈴木大拙師に師事。71年、京都大学大学院宗教学科博士課程終了。同年、大谷女子大学(現・大阪大谷大学)講師及び『イースタン・ブディスト』編集員に就任。80年、大谷大学非常勤講師に就任。91年、大谷女子大学教授及び大谷大学非常勤講師を辞任。現在、ロンドン大学 SOAS 教授資格研究員。SOAS 仏教研究センター運営委員会理事。ウェールズ大学世界宗教経験研究所客員教授。論文に「大行」(『鈴木大拙とは誰か』岩波現代文庫)など多数。
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