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研究活動報告
英訳『教行信証』研究会
 英訳『教行信証』研究会は、センター設立当初から継続して、鈴木大拙の英訳『教行信証』の解読を行い、現在、月例の研究会では「行巻」を読み進めている。また、2009年5月13日、東京ガーデンパレス(文京区)において、武蔵野大学教授のケネス田中(Kenneth K. Tanaka)先生をお迎えして、「真宗の英語表現と海外伝道―問題点と可能性―」をテーマに講義いただいた。ケネス田中先生は、アメリカで二十年という長い期間、多くの英語圏の方々に浄土真宗の教えを指導してこられた。研究会ではそこでのご経験とご苦労、そしてご専門のアメリカ仏教、現代仏教などについてお話いただいた。ここにその一部を紹介する。
真宗の英語表現と海外伝道―問題点と可能性―

親鸞仏教センター研究員 楠 宏生
■ 現代仏教
  現代仏教の特徴としては、「理性的」、「文献中心」であり、また「瞑想」を強調すること、そして「参加仏教」(engaged Buddhism)、つまり「社会的改革」や「普遍性」を強調する社会運動であるという点が挙げられる。アメリカにおける仏教がその代表的なかたちである。アメリカにおける仏教徒の人口は、統計では約300万人であり、今後、増加していく傾向にある。また別の統計では「仏教に何らかの影響を受けている」人を含めると約2500万人という驚くほどの数となっている。
 その中でも、禅仏教、チベット仏教、南方仏教に関わっている人々の多くは白人であり、共通して、瞑想による“practice”を強調している。それらアメリカの仏教徒たちの間では、「どの宗派に所属しているのか」ということではなく、「どのような“practice”をしているのか」が問われる。つまり、彼らは、教義に対して関心があるのでなく、その“practice”による「スピリチュアリティ」(spirituality)を求めているといえる。日本でもスピリチュアリティという言葉は広く注目されているが、その言葉の内容には幅がある。先生はスピリチュアリティを「本質的な宗教体験」つまり「体で体験すること」と定義される。“practice”とは「自分が納得する体験」を求めていくためのものである。このような人々は、アイデンティティとしては「宗派」「教義」ではなく、「この“practice”をやっているから私は仏教徒である」というように、“practice”による宗教体験に関心がある。一つの宗派に所属するということがなく、「体験」を求めて宗派間を移動することも多く見られる。
 また、現代仏教の特徴として、「個人化宗教」(privatized religion)ということがある。これは、環境や家族の問題など、個人的な特定の問題に関する宗教との関わり方である。自分が納得できるような捉え方の中で、つまり伝統や師の言葉を信ずるということではなく、スピリチュアル(spiritual)な部分について宗教と関わっているのである。
 また、心理学や心理療法はアメリカにおいて、仏教を受容する一つ大きな窓口となるものであり、その関係を強化していくことは重要である。近年、それに関する書籍が多く出版されている。このような流れの背景には、先に述べた“practice”と「体験」との関係、また、仏教を主体的に捉えている傾向があると考えられる。
■ 真宗の教えの現代的解釈
  ―伝道の立場から―

 浄土真宗の教えの中核となる法蔵菩薩の教えは、異なる国や文化に伝道していくうえで理解され難い。浄土真宗の伝道において一番中核となる部分で躓(つまず)いてしまっているところがある。では、法蔵菩薩、阿弥陀仏の教えをどのように捉え伝えていくべきであるか。その教え、伝承を“sacred story”(聖なるストーリー)として、また“myth”(神話)として捉えることが必要である。「神話」というのは「おとぎ話」のようなものではなく、「神話」というかたちでしか表現できない真実というかたちをもつ物語である。法蔵菩薩の教えを、釈尊の「目覚め」の流れを受け継ぐ大乗仏教の人々が、その「伝統」の中で目覚めて、それを伝えようとした時の“sacred story”であったと捉え、その“sacred story”を伝えていくことを放棄せず、より理性化し、具体的にどのような意味として示されているのかを考えて、現代に表現していくことが必要である。
 その一例として、アメリカでは阿弥陀仏を一般的に“the Buddha of Wisdom and Compassion"(智慧と慈悲の仏)と説明している。この翻訳は非常に理性化されているが、“Wisdom and Compassion”だけの解釈ではいまだ問題があり、この内容をさらに具体的に語っていくことが必要である。また、現代に仏教を伝えていくうえで、「教育」(宗教教育)という立場に力点を置いて考えていくことも必要である。
■ 真宗のキーターム
 真宗のキータームとして、先生からいくつかの翻訳語を紹介いただいた。ここでは「本願」、「大行」について紹介する。  「本願」は一般的には“original vow”または“primal vow”などとして翻訳されているが、鈴木大拙は“original prayer”と翻訳している。“prayer”の語はアメリカ社会の中において宗教的な意味あいをもつとともに、一般にも広く用いられている言葉である。他の翻訳に見られる“vow”は、やや「異質的に感じられる翻訳」であり、法蔵菩薩の“sacred story”の意味を理解している人にとっては納得のいく翻訳であるが、一般の人には、“vow”と言っても意味が通じていかないように思われると指摘される。また、“prayer”の語には、“vow”よりも普遍的な意味があり、“pray”の言葉そのものは一般の人にも馴染みの深い言葉であるから、“prayer”は多くの人に受容れ易い翻訳であると指摘される。また、“original”の意味を「最初の」、「本質的な」という意味として解釈され、“primal”「根源的な」の意味にも通じており、“primal prayer”という表現の可能性についてもご指摘いただいた。
 次に、「大行」について、鈴木大拙は“great living”と翻訳している点について、「行」の一般的な翻訳は“practice”であるが、鈴木大拙が“living”として翻訳した背景の一つとして、「大行の意味がもっている、主体的に生きていく人間の姿が表現されているように思う」という先生のご理解をお話いただいた。
ケネス 田中(Kenneth K. Tanaka) 武蔵野大学政治経済学部教授
1947年山口県に生まれる。70年、スタンフォード大学卒。米国仏教大学院修士課程終了。東京大学大学院修士課程終了。カリフォルニア大学バークレー校大学院博士課程終了。哲学博士(仏教学)。米国仏教大学院大学専任准教授などを経て、現在、武蔵野大学政治経済学部教授。武蔵野大学仏教文化研究所長。国際真宗学会会長。仏教キリスト学会評議員。日本仏教心理学会運営委員・事務局長。専門は浄土教、仏教とキリスト教の対話、アメリカ仏教、応用仏教。
著書に、The Dawn of Chinese Pure Land Buddhism: Ching_ying Hui_yuan's Commentary to the Visualization Sutra (State University of New York Press, 1990). Ocean: An Introduction to Jodo_Shinshu Buddhism in America (Wisdom Ocean Publications, 1997). The Faces of Buddhism in America (共編 The University of California Press, 1998).『真宗入門』(法蔵館2003). Pure Land Buddhism (Dharmaram Publications, 2004) など多数。
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