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研究活動報告
清沢満之研究会
 2017年6 月20日、天理大学人間学部教授である岡田正彦氏をお招きし、「リフォーマーとしての清沢満之――「教団」の世紀と精神主義――」というテーマで、「清沢満之研究会」を開催した。岡田氏は、これまで宗教学的な観点から近代仏教研究に取り組んでこられたが、清沢満之についても同朋会運動との関わりのなかで、その信仰上の意義を鋭く問い直している。本研究会では、宗教教団の近代化という大きな視野に立って、清沢満之と同朋会運動についてお話いただき、さらにそこから21世紀の信仰、教団のあり方についての問題提起をいただいた。ここにその研究会の一部を報告する。 (親鸞仏教センター研究員 長谷川 琢哉)
リフォーマーとしての清沢満之
  ――「教団」の世紀と精神主義――


天理大学人間学部教授 岡田 正彦氏
1.新宗教/伝統宗教
 私が研究を始めた30年前は、新宗教の研究が盛んでした。私自身そうした研究から多くを学びましたが、しかし、伝統宗教/新宗教という単純な区分には疑問も感じていました。伝統宗教のなかにも、信仰という点で人生に新しい価値を与えるような動きがあるのではないか。また同時に、新宗教も時を経ることで形骸化し、「家の宗教」になっていくという側面もあるのではないか。つまり、宗教は常に形骸化していく傾向をもつのであり、だからこそそれを揺り戻し、覚醒させる必要があるのではないか、と考えていました。そして、 そういった信仰覚醒運動を起こした人物として、近代の歴史のなかでも特筆すべきなのが清沢満之です。清沢満之を理解するにはこの点が重要であり、単に哲学者・思想家として語るだけでは不十分であると思います。

2.リフォーマーとしての清沢満之
 近代以降の歴史のなかで、伝統的仏教教団の側でも信仰覚醒運動が起こります。各宗派がさまざまな取り組みを行いましたが、精神主義は大変顕著なものでした。清沢満之という個人の信仰の目覚めが弟子たちを感化し、やがてその精神を引き継いだ同朋会運動が生まれます。教団そのものの改革に大きな影響を与えた清沢を、私は宗教学の用語を借りて「リフォーマー(改革者)」と呼びました。ただし、清沢の運動は非常にラディカル なものであり、あるいは「ファウンダー(創設者)」と言ってもいいかもしれません。清沢が起こしたのは教団内の改革なのか。それとも新しい運動なのか。ここには考えるべき問題があります。また、清沢が行ったことは仏教の近代化であると言われますが、しかし「近代」のモデルがすでに古くなってきているという問題もあります。

3.「個」の信仰と「教団」の再編
 私は10年ほど前に西方寺を訪れ、清沢が晩年を過ごした部屋を見せていただきました。家族を次々と失い、病も進行していた彼は、その狭い部屋で「我信念」を書いたわけです。不幸のどん底にありながら自らの境遇を肯定するということのすごさ。清沢がリフォーマーとなりえたのは、まさにこの信仰的実感のすごさがあったのだと思います。
 このような清沢の新たなる信仰の目覚めが、以後の教団改革運動の核心となっていきます。真宗大谷派の同朋会運動は「家の宗教」を乗り越え、「個」の信仰的目覚めを促すものでした。信仰の目覚めを求めるという動きは、新宗教だけでなく、伝統教団内にも起こります。時代に応じて信仰を覚醒させるという運動は、通宗教的に確認されるものです。真宗大谷派の場合は、まさしく同朋会運動というかたちでそれを行いました。清沢満之という一人の信仰者の意識改革をモデルに個々人の信仰覚醒が促され、それにより、信仰をもった個人の集まりとして、新たなる「教団」が再編されていったわけです。

4. 信仰の近代化は21世紀の信仰モデルになりうるか?
 しかし、このような動きは、近代日本という限定された状況において大きな可能性をもつものであったことを忘れてはなりません。清沢が違う時代に現れたなら、宗務機構の改革に先立つ意識改革というものを、はたしてなしえたのでしょうか。このことを問う必要があります。
 同朋会運動と同時期に、大谷派以外の各宗派でもさまざまな改革運動が起こりましたが、その多くは失敗に終わっています。日本は依然として地域の絆を重視する村社会であり、日本人にとっては「家の宗教」が強かった。結局のところ、それが改革運動失敗の原因です。しかしどうでしょう。その地域社会は現在すさまじい早さで解体されつつあります。同朋会運動の障害となっていた「家の宗教」も同様に弱まっている。そうであるなら、改革運動を疎外するものは何もなくなり、同朋会運動は今後上手(うま)くいくということになるのでしょうか。個々人の信仰は覚醒されていくのでしょうか。
 ところがそう単純ではないようです。最近の20代の人に話を聞くと、霊の存在を信じているという人が少なくありません。しかし、だからといって祖先を敬っているわけではない。一見すると若い人のなかで宗教的関心が高まっているが、それは以前とはまったく違うものなのです。教団の志向する宗教の近代化と、現代人が求める宗教性にズレがある。もはや「個」の信仰が新しいものではなくなっているという状況があります。
 20世紀は宗教が「教団」になった時代と考えることができます。「宗祖」がいて、「個々の信者」が主体的なコミットメントをもち、「教団」を形成する。こうしたかたちで伝統宗教は再編されてきました。ある意味では、同朋会運動はその最先端にあったということができます。しかし、今後はどうなるのでしょうか。「家の宗教」が解体されつつある今、「個」の信仰はこれからどのようなものになっていくのでしょうか。
(文責:親鸞仏教センター)
岡田 正彦(おかだ まさひこ)氏
天理大学人間学部教授
 1962年、北海道生まれ。天理大学文学部宗教学科卒業。大正大学大学院博士課程中退(宗教学)。アリゾナ州立大学大学院修士課程修了(宗教学)。スタンフォード大学大学院博士課程修了。天理大学専任講師、助教授・准教授を経て、現在、天理大学人間学部宗教学科教授。専攻は宗教学(近代宗教思想)。
 著書に、『忘れられた仏教天文学――十九世紀の日本における仏教世界像――』(ブイツーソリューション、2010年)、『宗教の詩学――テクストとしての「宗教」を読む――』(天理大学附属おやさと研究所、2007年)など多数。
 共著に、『近代仏教スタディーズ 仏教からみたもうひとつの近代』(法藏館、2016年)、『宗教社会学を学ぶ人のために』(世界思想社、2016年)、『近代化と伝統の間――明治期の人間観と世界観』(教育評論社、2016年)、『国家と宗教――宗教から見る近現代日本――(上巻)』(法藏館、2008年)など多数。
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