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研究活動報告
清沢満之研究会
 現在、「他力門哲学骸骨試稿」(以下「試稿」と略)の再読を行っている清沢満之研究会では、今年度より「試稿」の自筆原稿データの調査にあたっている。「試稿」は結核を患った清沢が垂水での療養中にはじめて「他力門哲学」を論じた画期的なテキストであるが、その原稿には数多くの推敲(すいこう)が加えられた痕跡が残されている。本研究会ではそうした推敲の痕跡も含め、これまで十分に明らかにされてこなかった「試稿」の自筆原稿の読解を進めている。
「他力門哲学骸骨試稿」再読
  ――自筆原稿の翻刻と読解――


親鸞仏教センター研究員 長谷川 琢哉
■ 「他力門哲学骸骨」という試み
 清沢満之の「他力門哲学骸骨試稿」は、1895(明治28)年1 月から3 月までの間に、結核療養中の垂水において書かれたものである。前年初頭に感冒に襲われた清沢は、当時「ミニマム・ポシブル」と呼ばれる極端な禁欲生活を行っていたこともあり、「一種の行者気取り」によって病を長らく放置していた。その結果、病状はかなりの程度にまで悪化してしまい、遂には半ば強制的に休業・転地療養を勧められることとなった。これを機に清沢は、自身のそれまでの生き方を「自力の迷情」であったと反省し、大きな方向転換を遂げることになる。そして、常に自らの死を意識させられるような病床にありながら、これまでとは異なる宗教的思索を開始した。それが「他力門哲学骸骨」と呼ばれる試みである。
 ただし、清沢がこのとき書いたものは、決定稿とはとてもいえない草稿にすぎなかった。

■ 自筆原稿の存在
 2016年に親鸞仏教センターに着任した私は、清沢満之研究会を主催するにあたり「他力門哲学骸骨試稿」を主要テキストとして選択した。そして同年、西方寺・清沢満之記念館を訪れた際に、「試稿」の自筆原稿を直接見せていただく機会に恵まれた。清沢が病床において書いた原稿用紙は、自らの手によって綴(つづ)られた冊子となり、西方寺に保管されていたのである。はじめて見るその原稿には、驚くほど多くの書き直し・推敲の痕跡が残されていた。それまで各種全集等の活字化された「試稿」に慣れ親しんできた私のイメージは、大きく覆されることとなった。

■ 多数の推敲の痕跡
 「他力門哲学骸骨試稿」は、『宗教哲学骸骨』(1893年)と並ぶ清沢満之の代表的な哲学的著作とみなされ、比較的熱心に研究されてきた。それゆえ各種全集版・現代語訳・単行本等として、これまで何度も活字化されている。そして、その度に自筆原稿が底本として用いられ、校訂が重ねられてきたが、数多くの書き直し・推敲の内容については、校訂注などでもほとんど触れられてこなかった。しかしながら、私が見ることができた「試稿」の自筆原稿に残された推敲の痕跡は、かなりの量を含んでいた。場合によっては原稿用紙の一頁が丸々黒く塗りつぶされ、最初から書き直された箇所なども見られた。こうした推敲の多くは、あるいは単なる書き間違いや修正にすぎないかもしれないし、それは、決して良くはなかった清沢の健康状態が引き起こしたものであるかもしれない。しかし他方で、これだけ多くの推敲の痕跡があるということは、「他力門哲学骸骨」という新たな思索を開始し、それを言葉へともたらそうとするに際しての清沢満之の苦闘が表れている可能性もある。決してスムーズに書き連ねられてはいないこのテキストにおいては、書いては消し、書いては消しというプロセスのなかに、「他力門哲学骸骨」という新たな思索が立ち現れてくる瞬間が刻み込まれているのかもしれない。少なくとも、「試稿」に残された推敲の痕跡をひとつひとつ解読し、可能な限り復元することができたら、これまでとは違う角度から「試稿」を読み直すことができるのではないか。
 このように感じた私は、原稿を所有する西方寺およびその画像データの管理を委託された大谷大学に、当センターの清沢満之研究会で自筆原稿の画像データを使用する許可を願い、了承をいただいた。そして2017年度より、その画像データを用いながら、詳細な「試稿」の翻刻・読解を進めているところである。ただし、自筆原稿は、基本的には公開されていない資料である。そのため研究会を通じて何らかの発見があった場合には関係各所と協議した後、しかるべき形で公表できればと思っている。こうした事情があるため、現時点でノートの具体的な内容に触れることはできない。そこで最後に、現在の研究会の様子をごく簡単に紹介し、本研究会のねらいをあらためて確認することで、報告に代えさせていただきたい。

■ 「他力門哲学骸骨」の根源へ
 現在の清沢満之研究会では、担当者である私が画像データを用いて翻刻を行い、それをセンター内部のスタッフと共に検討している。自筆文字の読解に加えて、墨で黒くつぶされた箇所なども可能な限り読解を試みているため、原稿のすべてを確認するにはかなり多くの時間を要している。そしてもちろん、墨塗り箇所を完全に読解することは不可能である。たまたま薄く残っている部分を読み取るのが精一杯である。とはいえ、清沢が執筆に際してどのような修正を行い、それにはどのような意図があったのかということについて、わずかながらではあるが、考えを進めているところである。また、そうした地道な読解を通じて、私にとって、新たな問いも生じてきた。すなわち、そもそも「他力門哲学骸骨試稿」とはいかなるテキストであったのか。少なくとも生前は出版されることのなかった原稿を、病床にある清沢が極度の集中力をもって書き進めたのはいったいなぜなのか。自筆原稿を一文字ずつ追いながら、「他力門哲学骸骨」という試みの根幹を問い直し、あらためてこの書がもつ意義を確かめなければならないと考えている。
(文責:親鸞仏教センター)
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