親鸞仏教センター
お問い合わせ
 
「現代を生きる人々」と対話するために
HOME親鸞仏教センター概要アクセスサイトマップ
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内ブックレビュー
 HOME > 研究活動報告 > 現代における人間像に学ぶ研究会
研究活動報告
現代における人間像に学ぶ研究会
 「現代における人間像に学ぶ研究会」は、現代の課題に真摯に取り組んでおられる方々に直接インタビューし、「現代の人間像」を学び、社会から要請されている親鸞仏教の課題を探ろうとするものである。その3回目は、2004年10月4日、ひまわりクリニック院長の森津純子氏を、文京区小石川の診療所に訪ね、お話をうかがった。1997年の開業以来、主にがんの医療相談とカウンセリングを中心に、多くの人の“心の治療”にあたっておられる。ここにその一部を紹介する。
いのちと現代医療
森津純子氏にインタビュー

聞き手:藤原 正寿(元親鸞仏教センター研究員)
■現代医療への疑問
――現代医療では、“スパゲティー状態”とも言われますが、患者さんの身体にたくさんの管くだを通して治療を行います。先生は、そういう医療のあり方について疑問をもたれた、と著書のなかでおっしゃっておられますね。

森津 そうですね、私が医者になった当時は、すでに管だらけの状態の患者さんが大勢いました。ただ、「本当にこれでいいのかな」という思いは消えませんでした。確かに医者の多くは、「患者さんを治すために管を使うのであって、強い薬も使わなければ治らないんだ」とおっしゃるのです。もちろん、家族の合意に基づいてこの治療方法がとられるわけですが、逆に、人間を早死させることもあるのです。実際に私は、そういうケースをたくさん見てきました。そう考えると、本当に管だらけにすることが医療として正しいのかどうか、という疑問をもたざるを得ませんでした。
 例えば、がん治療の場合、抗がん剤の副作用で、のたうち回って苦しみ、髪の毛は抜け落ち、顔や手足もパンパンに腫れたうえに、出血で紫色になって死んでいきます。現場にいて、とてもつらいと同時に、人間はそんなふうになってまで長生きしたいのか、と思いましたね。  私の診てきた患者さんには、そのように苦しみ、しかも治る人がほとんどいなかったので、結局、死んでいく人間が、なぜそんなにも苦しい思いをしなければならないのかと、とても悩みました。いまの病院では、本当に幸せに死んでいくことはできない。病院は、幸せに死ぬ場所ではないんだ、と。だからこそ、果たして人間が本当に幸せに死んでいける方法があるのだろうかと真剣に考えました。それで最終的に、ホスピスの道を選んだのです。

――そういう意味では、病院だけでなくて、現代社会そのものが、死と真正面に向き合うどころか、むしろ死を避けているというふうに感じられることも多いのではないでしょうか。

森津 そうですね。死を避けているというよりも、死とか病気は、嫌なものの象徴であって、皆、それを避けてしまっているんですね。医者もそうです。本当は、良いものと悪いものというふうに分けないで、自分の人生のなかにあるものを丸ごと真正面から受け止めて、「いったい自分とは何か」「自分はどう生きるのか」ということを、静かに見つめていけばいいのだけれども、それが見つめられなくなっています。そのことの象徴が、「死を見ない」ということではないでしょうか。そんな気がしています。
■誰のための医療か
――患者さん本人だけではなく、周囲の家族も含めて、治療法の選択に関しては、いろいろな葛藤が生まれてくると思うのですが、先生はそこにカウンセリングの重要な意味があるとお考えのようですね。

森津 葛藤が生まれてくるのは、価値基準をどこに置くかがわからないからではないでしょうか。管だらけになるというのは、判断基準が「長生きできるイコール良いこと」であって、長生きの中身、質ではないんです。だからそれは、どのくらい長く生きられたかという記録への挑戦みたいなことになってしまっています。  ところが、その記録への挑戦というような現在の医療のあり方と、患者さんや周りの人たちの思いとの間には大きなギャップがあったり、まったく別であったりします。一般に、“長生きできれば、とてもすばらしいことだ”ということに、実は皆、踊らされている部分があります。病気になったときに、いったい誰がその事実を引き受けるのかと言えば、患者さん自身が引き受けると同時に、周りにいる人たちとの関わりのなかに、その人の人生もあるわけです。少なくとも主役は医者ではないはずです。
 にもかかわらず、“管だらけを良し”とするのは、患者さんや家族の人たちが主役の人生であるはずなのに、もしかすると、医者が主役になってしまっていたのではないかという反省もあります。ですから、カウンセリングが重要だと考えるようになったのは、そういう医療の現状についての反省からでもあるのです。そのあたりを、やはり、もう一度よく見直して考えてみる必要があるのではないでしょうか。
 それから、皆さんあまりなさらないのですが、患者さんを自分のこととして置きかえて考えてみる、ということが大切だと思います。自分が、もし同じような状況に置かれたとき、果たして長生きするために、とても苦しい思いをしてまで、身体じゅうに管を通されたり、手足をベッドに縛られたりしたいかどうかです。そこまでして長生きしたいとお思いでしょうか。私は、機会あるごとに患者さんにお尋ねするのですが、9割の人が「嫌だ」と言いますね。だから、自分がされて嫌なことをなぜ他人にするのかという、そのあたりの感覚がどうもおかしくなっているのではないでしょうか。
 それは同時に、価値観がおかしくなっているのだと思います。世間が「正しい」と言ったら、それに右へ倣ならえなんですね。だから、社会全般のことについても、周りが「これが正しい」と言ったから、本当は疑問を感じたり、自分たちは嫌であっても、周りがそう言うからそれに従うというのは、もしかすると、どんどん間違った、悪い方向に行ってしまっているのではないかと思っています。
(文責:親鸞仏教センター)
※森津純子氏のインタビューは、『現代と親鸞』第8号(2005年6月1日号)に掲載予定です。
森津 純子(もりつ じゅんこ)ひまわりクリニック院長
1963年、東京都生まれ。筑波大学医学専門群卒業。都立墨東病院、昭和大学病院形成外科等を経て、92年、新潟県長岡西病院ビハーラ病棟(ホスピス)医長に就任。97年、「ひまわりクリニック」を開業。横浜蘇生病院ホスピス科非常勤医師。著書に『母を看取るすべての人へ』(朝日文庫)、『家族が「がん」になったとき真っ先に読む本』(KK ベストセラーズ)、『ひまわり先生の元気になれる処方せん』(毎日新聞社)、『絶対しあわせに死ぬ方法』(筑摩書房)など多数。
Backnember ページトップへ
公開講座 親鸞思想の解明 現代と親鸞の研究英訳『教行信証』研究会
清沢満之研究会 聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会 「『教行信証』と善導」研究会
『西方指南抄』研究会親鸞仏教センター研究交流サロン インタビュー
濁浪清風今との出会い研究活動報告出版物紹介講座案内バックナンバー一覧
親鸞仏教センター
MAP
親鸞仏教センターfacebook

親鸞仏教センター [真宗大谷派]<br>〒113-0034 東京都文京区湯島2-19-11
TEL 03-3814-4900 
FAX 03-3814-4901 
mail:shinran@higashihonganji.or.jp
 
掲載の記事・写真の無断転載を禁じます
Copyright©The Center for Shin Buddhist Studies. All rights reserved.
ホーム 親鸞仏教センター概要 講座のご案内 スタッフ紹介 バックナンバー一覧 リンク サイトマップ アクセス