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研究活動報告
テーマ別研究交流会
 「テーマ別研究交流会」では、講師と親鸞仏教センター研究員が現代に生起するさまざまな課題や問題を共有しつつ、対話を重ね、交流していくことを目的としている。
 2007年度は、テーマに「現代人の孤独」を掲げ、1月25日には文京区の東京ガーデンパレスにて、哲学者の内山節氏を講師にお迎えし、「現代人の孤独」の講題のもとに、研究交流会を開催した。
 本号では、氏の問題提起(要旨)を紹介しながら、応答内容の一部を報告する。
 なお、テーマ別研究交流会は、私たちが現在置かれている孤独という状況や存在のあり方を手がかりに、さまざまな専門家と対話してきたが、本号をもって終了する。
―孤独・孤立を乗り越えるために―
私たちはどういう関係の中に生きているのか


元親鸞仏教センター研究員 嵩 海史
■ 思想史から見たヨーロッパ近代史
 最初に内山氏は、自身が生活する伝統的な共同体が残る山村の生活を、不便さもあるにせよ、安心感という言葉を用いて特長づけられた。同時に最近では山村の生活も近代化・都市化の波が一段と激しく押し寄せてきているという。そうした生活上の体験を手がかりとし、近代社会について自身が専攻される哲学の立場から、以下のように概括された。
 ヨーロッパ世界では、18世紀後半にイギリスで産業革命が起こり、19世紀に入ってくるとフランスなど大陸側でも産業革命が起きます。そして、近代社会の形が見えてきた。実は、その時に挫折感を抱いた人たちが、インテリゲンチャの世界にいました。そういう人たちをロマン派と総称します。いろいろな分野に発生していて、まとまって何かをするわけでもありません。それだけに少し掴(つか)みづらいのですが、ロマン派の人たちは、近代社会に対して最初は、「科学や文明が発展し非常にいい社会である」という期待があった。ところが気がついてみたら、「ただ人間を下品にしただけなのではないか」というような問題意識が生まれ、文学なり思想として表現されてきます。
 ところが実際の社会構造とか社会システムということになりますと、ロマン派の発想が生きてくることはほとんどありません。何故ならば、まさに近代において個人の社会が形成され、経済が発展していくからです。その力の前にすべて飲み込まれていってしまったからです。
 このように内山氏はヨーロッパ近代史を取り上げ、特にロマン派の問題意識に注目するのである。
■ 実存的な問い
 さらに近代社会で生まれた個人と社会との関係について内山氏は、
 個人は強い個人になっていくかといいますと、決してそんなことはない。人間というのはそんなにいろいろなことに責任を負うことはできません。いわば自分の生活だけで精一杯になってしまう。そうするとそれ以外のことは、自分がうまく生きていくために適当に体制に合わせていく。いちいち抵抗するよりも、上手にその時代その時代に居場所を作っていく。だから、どんどん体制に迎合していく。そういう個人になっていってしまう。ですから、20世紀になってきますと、ロマン派の、一部のインテリゲンチャの話ではなく、一般の人たちも含めたものとして、ある問いがだんだん大きくなってきます。それは何かと言うと、「自分が何者でもなくなっていく」という感覚です。
と述べられた。そして現代に至っては、実存的な問いが一段と大きくなってきていると指摘された。
■ 現代人の孤独について
 テーマの「現代人の孤独」については、
 本日の講題「現代人の孤独」なのですけれども、決してこれは現代人が作り出したものということではなくて、そもそも近代における個人の社会そのものが、気がついてみれば人間をバラバラにし、そしてどこにも属さない、どことも繋(つな)がっていない人間たちを作っていったわけです。元々孤独な人間を作っていった。孤独な人間になればなるほど実は弱い人間になっていき、むしろ社会としては管理しやすい人間が作られていった。
 私は、人間そのものは元々いろいろなものと関係をもちながら生きてきた関係的存在だと思っています。最後に残ってきた家族の関係みたいなものもだいぶ切れかかっています。それは人によって違うかもしれませんけれども、そういう状況が出てきたわけです。そういう中で、どことも関係が結ばれていないような気持ちが出てくる。そうすると、そこで初めて見つけ出した関係の世界が携帯電話だったりすると、5分に1回は携帯メールを送っていないといられない気分になってしまう。このところにまさに「現代人の孤独」みたいなものがあります。そういう方向に向かって近代の社会は展開をしてきたのです。
 では、われわれはどうしたらいいのだろうかということになるわけです。やはり、私たちがまずどういう関係の中で生きているのかということを、もう一度掴み直さなくてはいけない時代なのでしょう。
と関係性から考えていくことを強く主張された。
■ 日本における個
 質疑の時間では、日本人の個の捉え方について応答がなされた、内山氏は、山村での生活の知恵を踏まえたうえで、
 日本人の精神を、個人か共同体かから理解しようとするのは間違いで、むしろ日本人の精神は多層的です。だから共同体で生きる人間がいても、その奥には見つめている個人みたいなものがあり、そこのところでは本当に家族もいなければ村もない。その点で個人主義的なものがある。ただし、その時には共同体との折り合いの世界を捨てるため、逆に自然の働きかけを強く受けるのだと思います。
と述べ、こういう精神構造は、現代でも依然として残っているという。ただし現代では、人間関係から切り離されることはあっても、自然との結びつきをもちにくいと語られた。
(文責:親鸞仏教センター)
内山 節(うちやま たかし) 哲学者
1950年、東京都に生まれる。立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特別任用教授。群馬県上野村で一年の半分を暮らす。専門は、存在論の視点からの哲学の研究。著書に『貨幣の思想史』『森にかよう道』(以上、新潮社)、『時間についての十二章』『自然と人間の哲学』(以上、岩波書店)など多数。『anjali』第13号に「自然と共生する思想―私たちは何を問い直さなければならないのか」を執筆いただいている。
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