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研究活動報告
現代の諸課題と対話する研究会
 現代という時代が抱えている課題に向き合い、そのなかで宗教は何ができるのか、ということを絶えず問い続けていく営みがなければ、宗教は単なる過去の遺物にすぎなくなってしまう。親鸞仏教センターでは、現代の課題と第一線で対決している方々との対話を通じて、親鸞の立場からのメッセージを発信していくことを願い、「現代の諸課題と対話する研究会」を開催している。今回は、2010年5月13日に鍋島直樹氏(龍谷大学法学部教授)をお招きして開催された第5回研究会の概要を報告する。
親鸞の生命観は現代に意味をもちえるか
−自死問題を契機として−(鍋島直樹)


親鸞仏教センター研究員 常塚 聴

■ 鍋島直樹氏との対話
 1989年以来、日本では毎年年間3万人以上の方が自死というかたちで命を終えざるをえない現状がある。この数は、2003年以降続いているイラク戦争による民間人死者数に匹敵する規模である。この数に、統計上自殺とみなされない「不審死」や「孤独死」のケースを加えれば、自死を選ばざるをえなかった人の数は事実上この数倍に上るとの推定もある。その意味で、現代の日本は、いわば「戦場」以上に人命が危険にさらされている現場であるとさえいえるのかもしれない。
 そのような「戦場」とでもいうべき現代社会において、宗教に関わる者が活動する余地はどこにあるのだろうか。しばしば聞こえてくるのが、「自殺は悪・罪である」「命を粗末にしてはいけない」という、宗教者の立場から自死を戒める言葉である。
 このような発言の背景に、多くの人が自ら命を絶っているという現状への傷みがあることは間違いない。しかし、このような言葉ははたして悲嘆のなかにある人や問題に直面して苦悩する人のもとに届くのであろうか。
 鍋島氏によると、仏教では生命を個々の生体に個別の独立したものと考えるのではなく、それぞれが相互に依存しつつ生起しているものであるとする。その意味で、個々の生命は“The Golden Chain”(黄金の鎖)のかけがえのない一つのつながりである、というのが仏教の生命観であると言えよう。一つひとつの生命はそれぞれかけがえのないものであり、それと同時にすべての生命とのつながりとして存在している。
 あらゆる存在がつながりをもって存在しているという生命観は、「自殺は悪だ」というように、現実の事柄に理念的な善悪二元論を当てはめるような価値判断を否定する。このような単純な二元論は、現実のただなかにいる人にとっては単なる「他人事」でしかないだろう。むしろ、倫理的な態度とは、善悪どちらとも判断できないあいまいな現実を前にして、それでもなお何事かを語らざるを得ないような現場に身を置き続けよ、ということであろう。マニュアル化できない現実から目をそらさず、絶えずその問いかけるものに答え続けようとすることが、宗教のもつ倫理性であり、単純な答えはないとわかりながらもなお現実に対峙(たいじ)していく勇気を与えてくれるものが、宗教のもつ智慧なのではないだろうか。

鍋島直樹(なべしま なおき)
龍谷大学法学部教授、人間・科学・宗教オープン・リサーチ・センター長
1959年兵庫県に生まれる。龍谷大学大学院文学研究科真宗学専攻博士課程単位取得満期退学。専攻は印度哲学・仏教学・真宗学。研究テーマは親鸞の生命観・縁起の生命倫理学・浄土教の生死観と看取り・仏教と心理療法など。日本医師会生命倫理懇談会委員、浄土真宗本願寺派ビハーラ活動専門委員などを歴任。著書に『死別の悲しみと生きる−ビハーラの心を求めて−』(本願寺出版社)、『アジャセ王の救い−王舎城悲劇の深層』(方丈堂出版)、『親鸞の生命観 縁起の生命倫理学』『仏教と生命倫理の架け橋』(共著)『心の病と宗教性−深い傾聴』(共著)(法蔵館)など多数。
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