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研究活動報告
聖典の試訳『尊号真像銘文』研究会
 親鸞にとって、聖徳太子とはどのような存在であったか。今さら問うべきことではないのかもしれない。だが、親鸞の言葉を拾っていくにつれ、疑問は次々と湧いてくる。なぜ、太子に関わる言及は、最晩年に、あるいは特定の著述のみに限られるのか。その大部分を占める「太子和讃」が、構成や用語法、内容、バランス等、諸々の点で他の代表的和讃と噛(か)み合わないのはなぜか。そもそも、太子について語った痕跡がほとんど残っていないのはどうしてか。親鸞が見た太子の姿は、実はあまりにぼんやりとしている。
 自らの内面にあまりにも深く関わった事柄について、私たちはあまりペラペラとは喋(しゃべ)らない。ときには沈黙もする。しかし、太子に対する親鸞の態度は、同じく親鸞にとってかけがえのない存在である、師法然に対するそれとも明らかに異なっている。親鸞が法然に言及するとき、その焦点は常に、法然個人の「御智慧才覚」ではなく、「如来よりたまわりたる」、「ただひとつ」の信に定まっているが、しかし、法然はそこで確かに〝語られている〞からだ。親鸞の言葉の端々に見え隠れする法然に対し、太子はあまりに語られない。本銘文は、実に貴重なものである。
自分が何をしたとか、誰それがどうである、といった個々の事柄について、親鸞はいちいち語らない。そこには、それだけの理由と〝重み〞がある。語られていないことにあえて踏み込もうというとき、何より最初に向き合うべきはこの〝重み〞ではないか。じっと耳を澄まさなければ、語るべき言葉も見つからない。
『尊号真像銘文』試訳 28
「善導大師の銘文」(六)
親鸞仏教センター元研究員 内記 洸
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現代語
  「御縁起曰(ごえんぎわつ)」というのは、聖徳太子の「いわれ」を語ったものです。「百済国(はくさいこく)」というのは、聖徳太子が日本にお生まれになる以前に、おいでになったという国の名です。「聖明王(せいめいおう)」というのは、太子がその百済の国においでになったときの、その国の王の名です。「太子阿佐礼曰(たいしあさらいわつ)」というのは、阿佐太子という、聖明王の子の名です[注1]。聖明王は百済で亡くなった聖徳太子を悲しみ恋い慕って、太子の姿に似せて金銅の像を鋳造したのですが、聖徳太子が再びこの日本にお生まれになったと聞き、わが子の阿佐太子を勅使として、その金銅の救世観音(くせかんのん)の像をお贈りしたそうです。この文は、そのとき阿佐太子が礼拝して詠んだ文なのです。つまり、「敬礼(きょうらい)救世大慈観音菩薩」と申し上げたのだと。「妙教流通東方(みょうきょうるずとうぼう)日本国」というのは、上宮(じょうぐ)太子〔聖徳太子〕は仏法をこの日本に広く伝えていらっしゃるのだと。「四十九歳」とは、上宮太子は四十九歳までこの日本に生きておいでになるのだ、と阿佐太子が申したというのです。贈られた金銅の救世菩薩像は、天王寺の金堂にお移りになりました。「伝燈(でんとう)演説」とは、「伝燈」は仏法を燈火に譬(たと)えたのです。「演説」は、上宮太子が仏教を説き広めておられるはずだ、と阿佐太子が申し上げたというのです。
  また、新羅の国から上宮太子を恋い慕って、「日羅」という聖人がやって来て[注2]、太子に礼拝し、次のように申し上げたそうです。「敬礼救世観音大菩薩」というのは、聖徳太子は救世観音でいらっしゃる、と礼拝したというのです。「伝燈東方」というのは、仏法を燈火に譬え、「東方」、つまりこの日本に仏教の燈火をお伝えになっていらっしゃる、と日羅聖人が申し上げたというのです。「粟散王(ぞくさんおう)」というのは、この日本は極めて小さな国だと。「粟散」とは、聖徳太子が粟の粒を散らしたような小さな国の王におなりになったと申し上げた、というのです。

〔注1〕「聖明王」:百済、第二十六代目の王。五五二(五三八?)年、日本に仏教を伝えたとされる。『日本書紀』のほか、朝鮮の『三国史記』、中国の『梁書』にその名が見える。
 「阿佐太子」:日本で聖徳太子の肖像を描いたとされる(唐本御影。有名な「太子と二王子」の肖像画)。『日本書紀』以外、他国には記録がない。

〔注2〕「日羅」:太子が師事した僧であるという(『聖徳太子伝暦』他)。ただし、『日本書紀』では六世紀、百済に仕えた日本出身の官僚として記録される。

原 文
 皇太子聖徳の御銘文
 「御縁起曰(ごえんぎにいわく) 百済国聖明王太子阿佐礼曰(はくさいこくせいめいおうたいしあさらいしてもうさく) 敬礼救世大慈観音菩薩(きょうらいくせだいじかんのんぼさつ) 妙教流通(みょうきょうるず) 東方日本国(とうぼうにっぽんこく) 四十九歳(しじゅうくさい) 伝燈演説(でんとうえんぜつ)」文 「新羅国(しんらこくの) 聖人日羅礼曰(しょうにんにちららいしてもうさく) 敬礼救世観音大菩薩(きょうらいくせかんのんだいぼさつ) 伝燈東方粟散王(でんとうとうぼうぞくさんおう)」文

 「御縁起曰」というは、聖徳太子の御縁起なり。「百済国」というは、聖徳太子、さきの世にうまれさせたまいたりけるくにの名なり。「聖明王」というは、百済国に太子のわたらせたまいたりけるときのそのくにの王の名なり。「太子阿佐礼曰」というは、聖明王の太子のななり。聖徳太子をこいしたいかなしみまいらせて、御(おん)かたちを金銅にて、いまいらせたりけるを、この和国に聖徳太子うまれてわたらせたまうとききまいらせて、聖明王、わがこの阿佐太子を勅使として、金銅の救世観音の像をおくりまいらせしとき、礼しまいらすとして誦(じゅ)せる文なり。「敬礼救世大慈観音菩薩」ともうしけり。「妙教流通東方日本国」ともうすは、上宮太子仏法をこの和国につたえひろめおわしますとなり。「四十九歳」というは、上宮太子は四十九歳までぞ、この和国にわたらせたまわんずると、阿佐太子もうしけり。おくられたまえる金銅の救世菩薩は天王寺の金堂にわたらせたまうなり。「伝燈演説」というは、伝燈は仏法をともしびにたとえたるなり。演説は上宮太子、仏教をときひろめましますべしと阿佐太子もうしけり。
 また、新羅国より上宮太子をこいしたいまいらせて、日羅ともうす聖人きたりて、聖徳太子を礼したてまつりてもうさく、「敬礼救世観音大菩薩」ともうすは、聖徳太子は救世観音にておわしますと礼しまいらせけり。「伝燈東方」ともうすは、仏法をともしびにたとえて、東方ともうすは、この和国に仏教のともしびをつたえおわしますと、日羅もうしけり。「粟散王」ともうすは、このくにはきわめて小国なりという。粟散というは、あわつぶをちらせるがごとくちいさきくにの王と聖徳太子のならせたまいたるともうしけるなり。 (『真宗聖典』523~524頁)

 
■参考(頁はすべて『真宗聖典』)

上宮太子仏法をこの和国につたえひろめおわします
・上宮皇子方便し 和国の有情(うじょう)をあわれみて 如来の悲願を弘宣(ぐせん)せり 慶喜(きょうき)奉讃せしむべし (508頁「皇太子聖徳奉讃」)


仏法をともしびにたとえたる
・無明長夜(じょうや)の燈炬(とうこ)なり 智眼くらしとかなしむな 生死大海の船筏(せんばつ)なり 罪障おもしとなげかざれ。 (503頁「正像末浄土和讃」)


阿佐太子 / 日羅
・そのとき百済のつかいにて 阿佐王子きたれりき 太子をおがみてもうさしむ 敬礼救世大慈観音菩薩 / 妙教流通東方日本国 四十九歳伝燈演説と礼しけり 儲君そのとき眉間より しろきひかりをはなたしむ (「大日本国粟散王聖徳太子奉讃」52、53首目 『底本親鸞聖人全集』二 和讃篇、261頁)

・日羅上人新羅より 難波の館にぞきたれりし これをあやしみきこしめし 太子ひそかにみそなわす / そのとき日羅ひざまづき たなごころをあわせてぞ 敬礼救世観世音大菩薩 伝燈東方粟散王と礼せしむ (同15、16首目、同254頁)


その他
・五濁悪世の衆生の 選択本願信ずれば 不可称不可説不可思議の 功徳は行者の身にみてり
 天竺(てんじく) 龍樹菩薩 天親菩薩
 震旦(しんだん) 曇鸞和尚 道綽禅師 善導禅師
 和朝       源信和尚 源空聖人已上七人
 聖徳太子 敏達(びんだつ)天皇元年 正月一日誕生したまう。
 仏滅後一千五百二十一年に当たれり。 (500頁「高僧和讃」末尾の文)

・山を出でて、六角堂に百日こもらせ給いて、後世を祈らせ給いけるに、九十五日のあか月、聖徳太子の文(もん)をむすびて、示現にあずからせ給いて候いければ、やがてそのあか月、出でさせ給いて、後世の助からんずる縁にあいまいらせんと、たずねまいらせて、法然上人にあいまいらせて、又、六角堂に百日こもらせ給いて候いけるように、又、百か日、降るにも照るにも、いかなる大事にも、参りてありしに、…… (616頁「恵信尼消息」)

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