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研究活動報告
『教行信証』「化身土巻・末巻」研究会
 親鸞仏教センターでは、現代社会と親鸞思想の接点を探るという目的のもと、親鸞の主著である『教行信証』「化身土巻・末巻」の研究に取り組んでいる。その「化身土巻・末巻」には『大集経』の長い引用があるが、そこには『往生要集』の影響があることを前回は報告した。その『往生要集』の説示を受けて、親鸞が確かめようとしたこととは何であったのか。前回に引き続き「忍辱(にんにく)品」の引用を中心に、これを考えてみたい。
 『大集月蔵経』引用の主眼② ―諸仏の法の護持―
 親鸞仏教センター研究員 藤原 智

■ 「忍辱品」引用文への追加
 前回の報告で確かめてきたように、「化身土巻・末巻」(以下、「末巻」)に引用される『大集月蔵経』(以下、『月蔵経』)七文のなかで、最後の「忍辱品」の二文はほぼ同文が『往生要集』に引用されている。その二文は『往生要集』において、例外的にではあるが、戒をたもたずとも冥衆(みょうしゅ)護持にあずかることを示す証文として引用されていた。末法無戒を立場とする親鸞が、『往生要集』のこの引用に注目し、『月蔵経』引用の締めくくりとしたことは十分理解できるであろう。そのうえでわれわれは、『教行信証』の意図を考えていかねばならない。
 そこで注目されるのが、親鸞が「忍辱品」一文目に『往生要集』では引用されていなかった箇所を、元の『月蔵経』から追加して引用していることである。それは引用冒頭の次の文である。


仏の言(のたま)わく。かくのごとし、かくのごとし、汝(なんじ)が言うところのごとし。もし己(おのれ)が苦を厭(いと)い楽を求むるを愛することあらん、当(まさ)に諸仏の正法を護持すべし。これより当に無量の福報を得べし。(『真宗聖典』385頁)
この文章を追加する親鸞の意図はどこにあったのか。今はそれを「まさに諸仏の正法を護持すべし」という釈尊の言葉のうえに見たい。特に注目すべきは、護持すべき法を「諸仏の正法」と述べている点である。
 『教行信証』は初めに『大無量寿経』を真実の教として掲げるが、この『大無量寿経』において「諸仏」とは、阿弥陀仏の第十七願「諸仏称名の願」の成就において語られる存在である。当然、『教行信証』においても「諸仏」とは「諸仏称名の願」と切り離して考えることはできない。そうすれば、ここでの釈尊の「まさに諸仏の正法を護持すべし」という言葉は、「諸仏の正法=称名念仏を護持すべし」という意味だと理解されることになるのではないか。親鸞は「忍辱品」引用に際して『往生要集』にない文を追加し、戒をたもたざる者が冥衆護持にあずかるとは、称名念仏において果たされるのだと経典に語らせたのである。

■ 「提頭頼吒天王護持品」と「忍辱品」との繫(つな)がり

 この視点から、直前の「提頭頼吒(だいずらた)天王護持品」を見てみると、実は同様のことが見て取れる。「提頭頼吒天王護持品」の引用は、まず仏が日天子・月天子に仏法護持を命じ、次に提頭頼吒天王・毘楼勒叉(びるろくしゃ)天王・毘楼博叉(びるはくしゃ)天王・毘沙門(びしゃもん)天王という四天王が同時に「仏法を護持」することを誓う。日天子・月天子は、智顗『法華文句』(『大正大蔵経』34-24-a)・吉蔵『法華義疏』(『大正大蔵経』34-464-b)・基『法華経玄賛』(『大正大蔵経』34-675-b)などで阿弥陀仏の脇士である観音・勢至だとされ、親鸞も同様のことを『唯信鈔文意』(『真宗聖典』548頁)で語っていることは注意してよい。この一段は阿弥陀仏と深い関係にある。
 「提頭頼吒天王護持品」の引用は、以上の日天・月天・四天王が仏法護持を誓う個所が引用されているのであるが、その後「乃至」と記されて次の一文が引かれている。


我いままた上首毘沙門天王と同心に、この閻浮提(えんぶだい)と北方と諸仏の法を護持す
(『真宗聖典』384頁)
この一文は、実は「提頭頼吒天王護持品」ではない。『月蔵経』の「提頭頼吒天王護持品」から続く四品は、四天王それぞれに個別の品が立てられるのであり、上記の文はその一連の四品の最後「毘沙門天王品」における毘沙門天王の眷属の言葉である。なぜこの一文が引かれるのか。過去の研究では、最初と最後を引いて四天王及びその眷属を貫くことを示すとする見解(皆往院『仏教大系 教行信証第九』506頁など)や、北方や毘沙門に意味を見いだす見解(信楽峻麿『教行証文類講義』第9巻211頁など)が出されてきたが、本報告ではこの「毘沙門天王品」引用に「諸仏の法を護持す」とあることに注目したい。すなわち、「提頭頼吒天王護持品」では四天王が同時に「仏法を護持」すると誓っていたが、この最後の「毘沙門天王品」の一文を引くことで、護持すべき「仏法」とは「諸仏の法」であると明確にしたのである。そして、繰り返すまでもないが、その「諸仏の法」とは「称名念仏」にほかならない。
 以上のように見てくると、「提頭頼吒天王護持品」と「忍辱品」との繫がりがはっきりと見えてくるであろう。「提頭頼吒天王護持品」の引用において、四天王は「諸仏の法=称名念仏」を護持すると誓っているとされた。そして、それを受けて「忍辱品」引用の冒頭において、釈尊が「かくのごとし、かくのごとし」とそれを承認し、「まさに諸仏の正法を護持すべし」と「諸仏の正法=称名念仏」を護持するように命じるという展開になっているのである。「提頭頼吒天王護持品」と「忍辱品」が、「諸仏の法=称名念仏」の護持という点で一貫するのである。
 親鸞は、『往生要集』の説示を受けつつ、経典を丁寧に読み取り、称名念仏における冥衆の護持が『月蔵経』に語られてあることを『教行信証』に示したのである。ただし、そこには重大な問題がある。それは、これまで本報告で触れていない「諸魔得敬信品」の引用に見ることができる。次回はこの点について、詳しく読み解いていきたい。

(文責:親鸞仏教センター)

※本報告に関連して『印度学仏教学研究』第六十三巻第一号(2014年12月)に「『教行信証』「化身土巻」所引『大集経』「忍辱品」への一試論 ―『往生要集』との連関から―」と題する小論を発表していますので、そちらもご参照ください。

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