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研究活動報告
「三宝としてのサンガ論」研究会
 2018年3月15日、花園大学文学部仏教学科教授の佐々木閑氏をお招きし、「仏教サンガとはなにか」というテーマで、「三宝としてのサンガ論」研究会を開催した。多岐にわたってご活躍されている佐々木氏は、インド仏教や律蔵文献の研究をご専門とされている。当センターでは、真宗門徒として「僧(サンガ)に帰依する」ことの意味を確かめていくにあたり、まずは釈尊のサンガの形成やその理念に学んでいかなければならないと考えている。佐々木氏からは、古代インドにおける釈尊の修行やサンガの理念・特色について講義をいただき、あわせて真宗教団においてサンガをどのように位置づけていくのかという問題について貴重な提言をいただいた。ここにその講義の一部を報告する。

仏教サンガとはなにか

花園大学文学部教授
佐々木 閑 氏
■ インドの世界観・釈迦の世界観
 古代インドは、梵天(ぼんてん)を中心としたバラモン教的世界観の中で、カーストという身分制度に支配されていた。ところが釈迦が生まれた時代になると、この世界観や社会秩序に疑問を呈(てい)する勢力が多く現われた。それが沙門であり、釈迦もその一員である。沙門である釈迦は、生まれによって幸せは決まらないという新しい価値観に立ち、努力によって幸せを求め、人は皆、平等であるという立場をとった。ただしそれは「人は皆、平等であるから幸せである」という普通の平等思想と異なり、「人は皆、平等に苦悩のどん底にある」という苦の上に立つ独自の平等観である。これが仏教という宗教の本質を考えるとき重要となる。
 老病死の苦しみを越えていくために釈迦が考えたのは、長い時間をかけた修行という努力によって自分の在り方や心を変えていくことである。伝承によれば、その釈迦が体得した道を説き広めてほしいと要請したのが当時のインド的世界観の頂点にいた梵天であった(梵天勧請(かんじょう))。これを受け入れた釈迦は教えを説き広めていき、やがて釈迦のもとに多くの弟子たちが集まり、仏教のサンガがここに形成されたのである。
■ 仏教サンガの基本理念
 仏教サンガのメンバーは釈迦の指導によって自分の力で修行をし、釈迦の体験を追体験することを望む人たちである。そのサンガを運営していく基本理念とは、仏道修行に全身全霊を捧(ささ)げることであり、サンガの中での行動の善し悪しの基準は、その行動が修行の妨げになるかならないかで決まっていく。
 修行に専念するというサンガの理念の大きな妨げになるものの一つは、仕事などの生産活動に従事することである。したがって、サンガは生産活動を行わず、在家信者からのお布施に依拠(いきょ)する。托鉢(たくはつ)によって人々の余り物をいただくのである。当然サンガの所在地も、人々が多くいる町や村に隣接したところでなければならなかった。また、所有する物品も衣や鉢(はち)など、修行に役立つ最低限の基準で決まっていき、特に鉢は托鉢の必須の道具であった。修行僧は毎朝托鉢をして、病気など何らかの理由で托鉢に行けなかった僧侶とも食べ物を分かち合いながら生活をするなど、集団での相互扶助(ふじょ)関係の中で修行生活をしていた。修行困難な事態が生じても、集団で生活することによってその困難を解消していく。修行を続けていくという大きな目的を達成するためには、集団で生活することが不可欠なものだったのである。他にもサンガの生活形態や組織的特色は多岐にわたるが、釈迦はこういったサンガの組織運営にも優れており、これが、歴史の中で消えていった無数の沙門宗教の中で、釈迦の仏教が生き残った大きな 理由である。
 このように、修行という一つの目的に専念するための組織であるサンガの特色は、例えば、現代の科学者の世界と類似している。科学者も自らの研究に集中するためには、研究以外の業務や活動を極力減らしていくことが望ましい。その場合、他者からの研究費などに依存して研究に専念するのである。その研究も、それがすぐに役立つか、すぐに成果が出るのかはわからない。しかし、支援する側は彼らを信頼し、研究による成果を期待するからこそ、研究費を援助するのである。このように、研究する側とそれを支える側の関係が良好であることによって、科学者は自分の研究に専念することができ、科学が進展していくという構図になる。そして、この関係が良好であるためには、不正行為などによって科学者の信頼が失墜するようなことが決してあってはならないのである。
 出家と在家の良好な関係を基盤として成り立つ仏教サンガの場合も同様である。世間から信頼される組織となり、その組織を守るために作られた規則集が三蔵の一つである「律」である。サンガに律があることによって、それが自浄能力となり、一般の人々からの信用につながっていたのである。
■ 浄土真宗としてサンガを考える
 釈迦の仏教と浄土真宗の教えとに隔たりがあることは一見して明らかであり、特に、仏法僧の三宝の中の僧(サンガ)は浄土真宗に当てはまらないのではないかと思われることもあるが、実はそうではない。仏教の制度や教義を考えるときは原点に戻ることが重要である。そのときどこまで戻れるかがポイントとなる。釈迦の立場、インド仏教の立場までさかのぼり、サンガは何のためにあるのかを原点に戻って考えると、そこから真宗教団としてのサンガの在り方が見えてくるのではないだろうか。
 サンガは、自分やその世界観を変えていくことを真剣に求めた人たちによって形成された組織である。真宗の教えにおいても、阿弥陀仏の力や極楽の存在を信じることによって自分の価値観が変わっていき、それまでは無明煩悩によって自分中心であった世界観が変わっていくのである。「諸法無我」の別のかたちでの覚醒という言い方ができるかもしれない。釈迦の説いた自力の修行とは異なるが、老病死の苦悩と向き合い、自分中心の価値観を転換し、そして、平等の実現を求めていくという点において、釈迦の教えと真宗の教えは共通している。その中で、「サンガとはなにか」を問うていくことが大切である。
 生産活動を停止して、自分のやりたいことにすべてをささげることが、釈迦のサンガの本来の目的であった。浄土真宗においては、本願を信じ、念仏の教えに生き、それを人々に広めていくという重要な目的がある。その目的に向かって仏道を歩む人々が集うところに、真宗門徒としての「サンガ」の在り方が見出せるのではないだろうか。

(文責:親鸞仏教センター)




※佐々木氏の問題提起と質疑は、『現代と親鸞』第40号(2019年6月1日発行予定)に掲載予定です。

佐々木 閑(ささき しずか)氏
花園大学文学部仏教学科教授
 1956年、福井県生まれ。京都大学工学部工業化学科および文学部哲学科仏教学専攻卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。米国カリフォルニア大学バークレー校留学を経て、帰国後、花園大学文学部専任講師、同助教授を歴任。2002年より現職。2017年、花園大学図書館長に就任。文学博士。
 専門は仏教哲学、古代インド仏教学、仏教史。研究領域はアビダルマ哲学の歴史的研究、インド仏教僧団における戒律の研究、大乗仏教の成立史、科学と仏教の関係性の研究。
 著書に『インド仏教変移論』、『日々是修行』、『出家とはなにか』、『出家的人生のすすめ』、『「律」に学ぶ生き方の智慧』など多数。
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