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研究活動報告
近現代『教行信証』研究検証プロジェクト
 「近現代『教行信証』研究検証プロジェクト」では、2017年12月8 日、親鸞仏教センターを会場に大谷大学教授の三木彰円氏をお招きして研究会を開催し、「『教行信証』研究をめぐる諸課題」という題のもと講義をいただいた。氏は、2011年の宗祖親鸞聖人750回御遠忌の記念事業である親鸞自筆の坂東本『教行信証』の修復・翻刻に長年携わってこられた。このたびの講義では、その成果を踏まえ、今後の『教行信証』研究にいかなる課題が見いだされてくるのかについてお話しいただいた。ここにその講義の一端を報告する。 (大谷大学真宗総合研究所東京分室PD研究員 藤原 智)

『教行信証』研究をめぐる諸課題

大谷大学教授
三木 彰円 氏
■ 教学史の検証の必要性
 今回は、『教行信証』に私なりに向き合ってきたなかで、今後の研究の課題となるような事柄についてお話をいたします。
 私が真宗学に関わり始めた当時、廣瀬杲(たかし)先生が、真宗学の大きな問題性の一つは教学史がないことであるとよくおっしゃっておられました。特に大谷派のなかでは十分にはないのです。ただ、教学史を検証していこうとしますと、どうしても教団史が踏まえられなければならないということ、さらには近代における明治以降の時代状況にまで目を向けなければならない。そういうなかで、近現代の『教行信証』研究を見ていこうとするときには、やはり江戸期の宗学というものを十分に踏まえなければなりません。
■ 江戸期に『教行信証』は読まれなかったか?
 何となく私たちの通念として、『教行信証』は江戸期には読まれなかった、という漠然とした感覚をもってしまっています。確かに、安居(あんご)の場で『教行信証』が講ぜられることはありませんでした。その代わりに『浄土文類聚鈔』(以下『文類聚鈔』)が安居の場で取り上げられていった、ということがよく言われます。けれども、実際どうであったのかと言いますと、江戸期にも『教行信証』関係の著述はかなりの数が出されています。では、一体なぜ江戸期に『教行信証』を安居で講じることはなかったのか。本当に『文類聚鈔』が『教行信証』に代わるものとして取り上げられたのか。ここに関係してきますのは、「相伝」のなかで『教行信証』が伝授のものとしてあるということです。そのあたりのところを、大きな背景として見ていかなければなりません。

 『教行信証』というのは、覚如が大町の如道という人に伝授をおこなっているという記録が残っております。蓮如上人以降の「相伝」のなかで『教行信証』の素読と科文の立て方を伝授していく、その源を辿(たど)ると覚如の『教行信証』伝授にまで遡(さかのぼ)るということは十分にありえます。一方で、『教行信証』のテキストを見ますと、少なくとも覚如から存覚のころには延書きが作られていく。そこに『教行信証』を読むということが、それなりに限定した形でおこなわれていく。やがてそういうなかで、私たちが「相伝」と呼んでいる形での学びがおこなわれていきます。
 大谷派の学問の初期のころには、「相伝」に関わった学僧たちがずいぶん重きをなしておられます。ですので、そういうものは当然高倉学寮のなかにも認識される状況としてはあるわけです。ですから講録類などを見ておりますと、「相伝」の解釈を出しまして、それに対して批判的な形で指摘をして、別の教義了解をおこなっていく。こういうことはかなり頻繁におこなわれております。そういう意味では「相伝」というものも江戸期には、かなり周知できる状況にはありました。

 それでは、『教行信証』がなぜ安居で講ぜられなかったのか。それはやはり「相伝」の伝授ということが大きな重さをもっていたのではないかという気がいたします。一方で「相伝」の学びのなかでは『文類聚鈔』を非常に重要なものとして見ています。『教行信証』はあまりにも広博であって、容易に受け止めがたいものと思われて親鸞聖人が晩年に『文類聚鈔』をわざわざお作りになったという『教行信証大意』の記述があります。それは蓮如上人が『文類聚鈔』を重視する視点になっていきます。さらにはそれを受けた「相伝」も『文類聚鈔』は『教行信証』以上に重要なお聖教として見ていく。そうしますと、安居のなかで『文類聚鈔』を講じていくというところに脈絡がある可能性はあると思います。『教行信証』の代わりに『文類聚鈔』という面もありますが、『教行信証』の代用として『文類聚鈔』というわけでもない。その「相伝」から高倉へ継承されていくものが、考える視点になっていく気がいたします。
■ 『教行信証』公開という願い
 『教行信証』をはじめ、テキスト一つにとりましても、あるいはそれに対する研鑚(けんさん)の在り方に対しましても、まず事実確認とそれを掘り起こしていく作業が非常に多岐にわたるものとしてある。そのなかで明治以降の特記すべき事柄は「公開」ということです。これが近代の教学研究の根っこにあるという感じがします。ただ、公開するというときに、公開されるべき事柄は親鸞聖人の書かれたテキスト本文ということもありますけれども、その本文を読んできた学びの歴史も公開されていかなければならない。覚如上人の伝授から始まって、蓮如上人、あるいは「相伝」、あるいは高倉までの移行の期間、あるいは高倉の宗学、それぞれ時代の状況のなかで少しずつでも、それ以前の在り方や状況を越えようとしていくということは、教学史のそれぞれの時代のところに私たちは認めていかなればならないと思います。そういうなかに『教行信証』、お聖教というものが軸に置かれていく。そのなかで『教行信証』が本当に多くの人の目に触れる、そういう形が江戸期から明治にかけておこなわれていく。さらに山辺習学氏・赤沼智善氏、あるいは金子大栄先生がそれを講ずる。そういうことを契機としながら、宗派・教団というものにも限定されず、あるいは宗派を越えてさまざまなところに『教行信証』に触れていってほしいということがずっと底に流れている。それが明治以降であろうという感じがするわけです。

 そういうなかで、私たちが親鸞聖人の文字に、言葉に本当に直接していく、公開されているものに向き合っていく。これをせずに解釈も研究もありえないということ、そこが一つ大事なところであろうかなという感じがいたします。

(文責:親鸞仏教センター)




※三木氏の問題提起と質疑は、『近現代『教行信証』研究検証プロジェクト 研究紀要』2号(2019年3月1日)に掲載されています。

三木 彰円(みき あきまる)氏
大谷大学教授
 1965年宮崎県生まれ。1993年大谷大学大学院文学研究科博士後期課程(真宗学)単位取得退学。文学修士。大谷大学講師、同准教授などを経て、2016年より現職。
 宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌の記念事業として展開された『教行信証』「坂東本」の御修復事業(2003年7 月から2004年7 月)に携わられ、そこで得られた知見や成果の内容を、『真宗』誌等、各地で広く公表されている。
 2013年2 月には、親鸞仏教センターが主催する『教行信証』真仏土・化身土巻研究会へご出講いただき、「『教行信証』の諸問題─親鸞自筆・坂東本を通して─」のテーマのもとご講義をいただいている(講義録は『現代と親鸞』第27号に収録)。
 著書に、『『坂東本・教行信証』と親鸞聖人』(2009年、難波別院)、『テキスト 唯信鈔文意 唯信鈔』(2010年、難波別院)、『テキスト 一念多念文意』(2012年、難波別院)、『テキスト 尊号真像銘文』(2013年、難波別院)、共著に『ブッダと親鸞』(東 本願寺出版部)など多数。
 また、2007年8 月から2009年6 月まで、機関誌『真宗』に「『坂東本・教行信証』と親鸞」をテーマに連載。
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