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ブックレビュー(書評)
2009年 1月
[特別編] 国府田 隆夫 氏(物理学者・東京大学名誉教授)

『「待つ」ということ』

  鷲田 清一 著 [角川選書396 1470円 2006年]

 本書の著者は、第6回「親鸞仏教センターのつどい」(2008.4.11)で「成熟の意味」と題する講演をされた臨床哲学者で、多くの一般的著書でも広く知られている。
 「焦れ」で始まり「開け」で終わる十九節構成からなる本書の全体は、裏表紙の次の文がよく要約している。
 現代は、待たなくてよい社会、待つことができない社会になった。私たちは、意のままにならないもの、どうしようもないもの、じっとしているしかないもの、そういうものへの感受性をなくしはじめた。(後略)
 "待たなくてよい、待たない"から"待てない"と変化してきた現状は誰にも思い当たるが、それは"進化"なのか"運命"なのか? 読者は二字熟語が並ぶ目次を見て、どんなメッセージを著者は本書で伝えようとしているのかと思う。
 読み始めると意外に読みやすく、平易な文章で具体的事例が語り継がれていく。
 ひとつだけ例をあげよう。
 冒頭の節「焦れ」に"前傾への強迫"という小節があり、接頭詞「プロ」(前に、を、の)がついた言葉が、プロジェクト(企画)、プログレス(進歩)、プロフィット(利益)……と列挙される。個々の言葉は積極的だが、全体としてはこうしてはいられないという気忙しい気持ちを誘われる。著者は「こうした前のめりの姿勢は、じつのところ、何ももっていない」(18頁)と断じるのである。
 そうに違いない、ではどうしたらいいのだろうと読者は思うだろう。その気持ちに対して著者は、焦ってはいけない、じっくり症状を見定めようと考察を進め、最後の節「開け」で、ある可能性を示唆する。待ち焦がれるのではなく無心に待つ、「待つこと」は「待たれること」だと気付く、それが大切ではなかろうかと説く。「待つ」という言葉の多様性(待ち侘(わ)びる、待ち遠しい……)に込められた日本人の繊細な感受性を取り戻すことが大事ではなかろうかとも言う。
 日常的に身についた"前傾の姿勢"が、いつしか緩(ゆる)やかなものとなっていることに読者は気付くに違いない。

(国府田 隆夫)

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