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ブックレビュー(書評)
 
2010年 8月
『夜』
  エリ・ヴィーゼル 著 [みすず書房 2,800円 2010年]

 「彼の最後のことばは私の名前であった。呼びかけであった。 しかも、私は答えなかった。」 アウシュビッツ強制収容所の地獄を生き抜いた人々の表現というのは、実にさまざまだ。例えば、『夜と霧』が、ヴィクトール・フランクルの明晰(めいせき)な知性のもと、ひとつの心理学的叙述として"完結"しているのに対し、ヴィーゼルのこの『夜』には終わりがない。物語の結びに至ってなお、その奥でまだくすぶり続けているものがある。
 フランクルが描く人間の悲惨は、その悲惨によってむしろ際立(きわだ)たせられるような人間の偉大さ、その悲劇からの「救い」ということと分かちがたく結びつき、そこへ向けて放射されているが、ヴィーゼルの語る悲惨には底がなく、答えがない。それはまるで、ホロコーストという「夜」が決してまだ明けていないということ、否、そもそもこの「夜」は明けるものなのかということを突き付けてくるようだ。私たちにとって救いは本当にあるのか、それともないのか。救われるとは一体、どういうことなのか。「夜」の生き残りの「証人」たちにとって、この問いかけは切実である。なぜなら彼らは、自分自身に対して発せられる、その問いかけにおいて生きているのであるから。

文責:内記 洸(センター嘱託研究員)

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