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ブックレビュー(書評)
 
2011年 4月
『満月の夜、母を施設に置いて』
  藤川幸之助 著 [中央法規 1,500円 2008年]

しゃべったらしゃべったで
黙っていろと言い
しゃべらなくなると
しゃべってくれ
一緒に話したいんだようと
母の手を握り願う

まずい料理を食べさせられたら
なんだこんなもの食べられるかと思い
作らなくなったらなったで
母のカレーを食べたいと
母がカレーをよそっていた器を見る

指をかんだらかんだで
子どもみたいだと叱りつけ
手を動かさなくなったらなったで
母さんほらジャンケンやろうよと
子どもみたいに涙を流して母の手を握る
(「母の足をさすりながら」より抜粋)

 藤川幸之助氏の詩を読んでいると、涙を流しながら、精一杯の言葉で私たち聞き手に語りかけてくれた氏の姿が浮かんでくる。父を亡くし、妻を亡くし、今、認知症の母と共に生きている氏であるが、氏の語る言葉がこれほど私たちの心を打つのは、単にこういった過去の経験によるというよりも、氏自身が現在、その経験を引き受け、見つめることにおいて生きているからではないか。最初こそ、認知症の母のことが「詩のネタになる」と考えたけれど、そこから納得のいく詩はまったく生まれなかった、と氏は言う。彼にとって詩とは、趣味でも仕事でもファッションでもなく、葛藤(かっとう)を抱えつつ「母と共に生きる」という彼の「生」そのものの表現なのだ。「自分が支えられて生きている」ということの実感から始まっているからこそ、その言葉は強い。かたちは違えど、同じく言葉を紡ぐことを生活の一部にしている者として、氏と同じようでありたいと強く思う。

文責:内記洸(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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