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ブックレビュー(書評)
 
2011年 4月
『旅をする木』
  星野道夫 著 [文春文庫 476円 1999年]

 現代を「想像力欠如の時代」と評せるかもしれない。情報技術の発達によって、私たちは遠く離れた友人や家族と、いつでも気軽にメールや電話のやり取りを交わすことができる。行ったことのない国、見たことのない生物であっても、インターネットを介せば、簡単に写真や動画などの情報を手に入れることができる。それは科学技術による一つの恩恵であるとは思うが、そのように何かを得るたびに、一方で確実に失いゆくものがあるということを、便利で快適な生活にどっぷり浸(つ)かってしまった私たちは、あまり理解できていないように思える。
 アラスカの地を心から愛し、アラスカの自然に抱かれるように亡くなっていった著者は、たぐいまれな想像力の持ち主であった。ルース氷河に一本のオオカミの足跡を発見した彼は、岩と氷だけの無機質な世界を一頭のオオカミが旅をしていた夜が確かにあったことを想う。東京でせわしなく時間が流れていく一方で、アラスカの海ではまるで映画のようにクジラが海面から飛び上がる雄大な時間があることを想う。現代社会の中で生きる私たちは、デジタル画面には映らない、そういう人知を超えた自然の神秘を捉(とら)える力を失ってしまった。際限なく自我を拡大し続け、自然への想像力というブレーキを失った人間は、いったいどこへ向かうのだろうか。私は旅に出たいと思った。

文責:花園一実(親鸞仏教センター研究員)

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