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ブックレビュー(書評)
2011年 8月
『秋葉原事件―加藤智大の軌跡』
  中島岳志 著 [朝日新聞出版 1400円 2011年]

 2011年3月24日、まだ震災の混乱冷めやらぬなか、新聞を見ると加藤智大(ともひろ)に死刑判決が下されたという記事が載っていた。一面ではあったが、それほど大きくない記事だった。7人の死者、10人の負傷者を出したあの秋葉原無差別殺傷事件から、いつの間にか3年が経過していた。加藤と私は同じ歳で、神戸の酒鬼薔薇(さかきばら)事件以降、「キレる若者」の代表格と見なされていた1982年の生まれである。ただ同世代でありながら、私には彼が何を考えてあのような犯行に及んだのか理解できなかった。当時世間では、派遣切りにあった若者が社会への復讐をうたったのだという、とてもわかりやすいストーリーが作られていた。しかし私には、食い入るようにテレビ中継を見守っていたあの時から、怒りよりも悲しみよりも、相変わらず「わからなさ」ばかりが募っていた。
 本書は、現時点で秋葉原事件についてまとめられた数少ないものであるが、事件の詳細よりも、加藤という人間そのものに焦点を当てて、その生い立ちから犯行に至るまでの軌跡を克明に記していることが特徴である。
 本を読み終えて、なぜ彼が犯行に及んだのか、結局その理由は私にはわからないままであった。恐らくどれだけ彼のことを理解したつもりになっても、それはわからないままなのだと思う。結局、彼は得体のしれないモンスターなどではなく、私と同じ移ろいやすい人間なのであった。私がなぜ人を殺してはならないのかという問いに決定的な答えをもちえないように、彼の犯した行為についても、確実なことは何一つ言えないのではないか。こんな曖昧な感想は、「わかりやすさ」を求め続ける現代社会のなかではきっと箸にも棒にもかからないものであるに違いない。でも私はその「わからなさ」の質を考え続けたいと思ったのである。

花園一実(親鸞仏教センター研究員)

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