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ブックレビュー(書評)
2013年8月
『想像ラジオ』
  いとうせいこう 著 [河出書房新社 V本体1400円(税別)]

 津波が去った後、人々の想像力を電波として、あるラジオ番組が流れ始めた。その名も「想像ラジオ」。DJの名はアーク、苗字(芥川)にちなんだとも「方舟」の意とも。リスナーはどうやら死者のようだ。しかし、時にその声は生者の耳にも聞こえ届く。
 本書は、東日本大震災を契機として、作者が16年の沈黙を破って書きおろした小説で、「ポスト3.11文学」とも呼ばれる。今年度の芥川賞候補にもノミネートされた。物語のなかで順番に繰り広げられる、生者の会話と死者のラジオ放送を通して、次第にそのつながりが見いだされていく。
死者と共にこの国を作り直して行くしかないのに、まるで何もなかったように、事態にフタをしていく僕らは何なんだ。この国はどうなっちゃったんだ…広島への原爆投下の時も、長崎の時も、他の数多くの災害の折も、僕らは死者と手を携えて前に進んできたんじゃないだろうか? しかし、いつからかこの国は死者を抱きしめていることが出来なくなった。それはなぜか?…声を聴かなくなったんだと思う。
 生者と死者をつなぐのは声。そして、生者にその声が聞こえるのは「透明な悲しみ」が湧いた時。DJアークは言う、「本当は悲しみが電波なのかも知れないし、悲しみがマイクであり、スタジオであり、今みんなに聴こえている僕の声そのものかもしれない。つまり、悲しみがマスメディア。テレビラジオ新聞インターネットが生きている人たちにあるなら、我々には悲しみがあるじゃないか」と。
 悲しみこそが「人と人とをつなぐ」という原点に立ち返らされる一冊。最後にリクエストされた“不朽の名曲”が、今も心の奥底で鳴り響いている。

名和達宣(親鸞仏教センター研究員)

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