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ブックレビュー(書評)
2015年6月
『鬼談』
  京極夏彦 著    角川書店 1500円(税別)

――なぜこんなにも長いのか。京極小説を愛読している読者の悩ましくも喜ばしい問いであろうか。その答えは一様ではないだろうが、自分なりの答えはある。それは、登場人物――端役と言われそうな人物も含めて――の日々の、時々の思考や内省が事細かく徹底的に書かれているからだ、というもの。誰しも日常の何気ないふとしたタイミングでも思うことは多様にあり、期せずして思考の世界に迷い込んでいる。そんな一人ひとりが迷い込んだ思考の世界を子細に滔々(とうとう)と描くがゆえに、長くなる。この長さが登場人物の生きる世界を深めていくのであり、まさに京極小説の「生命線」だと思う。
 「 」談シリーズの四作目となる『鬼談』は、これまでのシリーズと同様、短編集である。一つひとつの物語は確かに「短い」のであるが、一人ひとりの思考を丁寧に描くさまは他の京極小説と変わらない。『鬼談』は九篇よりなる短編集であるが、それぞれに取り上げられる人物たちの濃厚な思考の世界を通して、「鬼」という形なき何かとの出会いを描く妖(あや)しき一冊である。
 本書に書かれる「鬼」という非存在的な、人ならざる何かとの出会いは心が凍りつく感覚を覚える。本書に収められる「鬼棲(きせい)」には中国における「鬼」の原義に言及してはいるが、だからと言ってこれが「鬼」だと提示しようとする意図はこの『鬼談』にはない。とにかく本書を読めば、さまざまな角度から描かれる「鬼」によって、角の生えた一般的な「鬼」のイメージが解体され、それまで絵空事であった「鬼」という存在が自分の世界に紛れ込んでくることであろう。
 例えば「鬼情」では「鬼」について問答されるが、「そこに留まり、永遠に煩悩の虜(とりこ)となって在(あ)る気か。それを、鬼と云うのだ。」などとある。これは人の所業ならざる「鬼」を説くものであるが、この言葉よりもむしろその前の一節に引き込まれた。

……成仏するとは、人でなくなると云うことか。慈愛なくしては、仏道も歩めぬのではないのか。人と仏の道は違う方向へと延びる道なのか。
もしあなたにそれがないと云うのであれば。
あなたこそ鬼である。

中村玲太(親鸞仏教センター研究員)

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