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ブックレビュー(書評)
2015年8月
『本願とは何か―親鸞の捉えた仏教』
  長谷正當 著    法藏館 本体3700円(税別)

 「本願とは何か」というタイトルが付いている。しかしその内実は、決して「本願」を対象的に問うものではない。宗教の問題をめぐり、「対象論理ではなく場所的論理でなければならない」と言ったのは西田幾多郎であるが、その場所的論理について、かつて著者は「宗教を自己に爐いて甬飜世垢詢場」と端的に言い表していた(『浄土とは何か―親鸞の思索と土における超越』法藏館2010年)。本書の全体を織りなすのは、まさに「本願」を著者の身上に「おいて」究明した思索であり、それが特に、近代親鸞教学の代表者・曽我量深の言葉を「導きの糸」として展開されていく。
 本書の中心課題は、序の冒頭で「本願はどこに淵源(えんげん)するか」「どこではたらくのか」という二つの問いをもって明示される。そして、本論のなかで具体的に掘り下げられていくのは、第一に「本願」と「釈尊の正覚」とのつながりであり、次いで「本願はどこで、どのようにはたらくのか」という問題である。
 第一の問いはそのまま、親鸞は仏教の歴史をどのように見たか――すなわち「浄土真宗とは何か」という問題に置き換えられる。客観的な歴史的事実としては、釈尊が「弥陀の本願」を説いたとは言えない。その一方で、親鸞は『無量寿経』の経説にしたがい「釈尊は弥陀の本願を説いた」と言明する。前者(説いていない)は近代の仏教学においてはもはや常識であるが、後者(説いた)もまた、真宗教団においては自明のこととなっており、あえて問われることはない。しかし著者は、その問題を徹底的に追究し、「釈尊の正覚」の深み(底)に映ったものとして「弥陀の本願」を見いだすとともに、釈尊以前から人類の心の底を流れていた「根本的な要求」をも掘り起こす。ここにおいて、思索の焦点はおのずから第二の問いへと展開していく。
 本願のはたらく場――それは繰り返し「衆生の歴史的世界」と押さえられ、あるいは「宿業の世界」「人間の住む大地」とも言い表される。そして、本願はわれわれの生きるこの歴史的世界に「呼びかけ」として現れると言われ、さらには阿弥陀如来が形を変え、法蔵菩薩(=一切群生海の心)となって宿業の大地に現れるとも捉(とら)え直されるが、そこで浮き彫りとなってくるのが、親鸞教学の骨格たる「回向」の問題である。

親鸞は回向の根本を、阿弥陀如来が衆生の世界に法蔵菩薩となって現れたところに捉えた。…法蔵菩薩は、その誓願を成就して阿弥陀仏となって西方浄土に消え去ったのではない。西方浄土から、衆生の宿業の世界に舞い戻って、現在もなおその誓願の成就を誓って衆生に呼びかけている。それゆえ、親鸞は法蔵菩薩を「一切群生海の心」と名づけるのである。…回向は、回施された如来の功徳を有り難く頂戴することではなく、如来が法蔵菩薩となって衆生の心に「形を変えて現れ」、はたらいているその心を感得することである。それは如来の大悲心を「一切群生海の心」として感得することである。本願の信とは「一切群生海の心」を感得することである。
 (230〜235頁)
 本書で繰り広げられる思索には終始圧倒され、言葉を失わざるをえない。しかし、読み進めていくほどに、「本願とは何か」という問いが、自己の身上に「おいて」展開していくのを感ずるだろう。

名和 達宣(親鸞仏教センター研究員)

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