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ブックレビュー(書評)
2015年10月
『プラトンとの哲学――対話篇をよむ』
  納富信留 著    [岩波新書 本体800円(税別) 2015年]

 以前、ある経済学者の方から「仏教者の話し方には全然狢佻鱈瓩予期されていない」と指摘され、会場に火花が走った。仏教者(と言うよりも親鸞仏教センターの面々…)はただ一方的に仏教の話をするだけで、ボールを投げ返されることに対してはまったく準備をしていないという。そして、そういう印象をずっと受け続けてきたから、反面教師として「対話」は大事だと思うようになったとまで言うのである。
 なるほど…の一言に尽きる。もちろん筆者もその批判を投げかけられた一人にほかならないが、私自身がいわゆる仏教界、あるいは真宗教団に身を置くなかで、ずっと似たような印象をもち続けてきた。しかし、その一方で「そもそも対話とは何か」と問い返したい衝動にも駆られたため、まずは自分自身が「対話」について考えてみることにした。そう思い立った矢先に偶然めぐりあったのがこの本である。
 著者は、日本のみならず世界を代表するプラトン研究者。『ソクラテスの弁明』の新訳を手がけるなど、「対話篇」を「現代の対話」として蘇(よみがえ)らせたことでも知られる。本書には「プラトンとの哲学」(notプラトンの哲学)という少々変わったタイトルが付けられているが、実はその背景にあるものこそが「対話」の精神である。

そこで(プラトンの対話編で)展開されるのは、問いと答え、それもほとんどの場合、答えが出ないままに終わる探求の過程です。私たち読者は、いわば言葉の海に投げ出され、自力で泳ぐことを求められます。書かれた言葉の一つ一つに触発され、納得や疑問や反発の渦に巻き込まれながら、著者プラトンをどこにも見ないまま、自分で考えていかなければなりません。不在の著者は、私たちがそう反応する様を想定しながら、ソクラテスと対話相手の間の言葉を紡ぐことで、読者の魂に何かをひき起こそうとしているのではないでしょうか。読むなかで私たちは自問し、思案します。そこでプラトンとの対話、つまり哲学が始まるのです。 
 (13-14頁、括弧内は筆者が補足)
 プラトンの「対話篇」につづられているのは、ソクラテスから投げかけられた「問い」に反応するさまざまな対話相手の姿であるが、ほとんどの場合「答え」が出ないまま、疑問や反発として終わっている。それは著者のプラトン自身が、ソクラテスと対話するなかで衝突したアポリアー(行き詰まり)をそのまま記し、「問い」を「問い」のまま投げ渡すことで、読者の魂に「何か」を引き起こそうとしているからだという。そして、私たち読者は、その「問い」を自問し、思案するなかで「プラトンとの対話(哲学)」が始まるというのである。
 ところで、本書の終盤で著者は、「対話」とは共同作業であり、言葉と言葉がぶつかったときに、その間で火花のように生じる「子ども」だと述べる。双方の「子ども」なので、私一人だけのものではない、けれども私が大切に育てなくてはならないというのである。そうすると、冒頭に挙げた火花も、大切に育てるべき「子ども」なのかもしれない、と思うに至った。

名和 達宣(親鸞仏教センター研究員)

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