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ブックレビュー(書評)
2015年11月
『すべてがEになる I Say Essay Everyday』
  森博嗣 著    [幻冬舎 本体724円(税別) 2000年]


夏休みの押し花のように
懐かしい本のページには
忘れてしまった優しい気持ちが
きっと残っているだろう。
 (森博嗣『すべてがEになる I Say Essay Everyday』「まえがき」より)
 来年、誕生から20年を迎える森博嗣『すべてがFになる The Perfect Insider』(講談社)は、2014年にドラマ化、2015年にはアニメ化と何かと話題である。しかし、今回のレビューは「F」ではない。あくまで「E」である。
 『すべてがEになる』は、森博嗣がホームページ上で365日毎日欠かさず書き連ねた日記を書籍化したものである。森博嗣自身が、果たして本にする必要があるのかと毎度問うているが、この通称日記シリーズは結局5冊の刊行をみることになる。そこには森博嗣の「思考」と「生活」が濃密(かつ軽妙)につづられている。『すべてがFになる』などを愛読し、「森博嗣」という空気を吸って育ってきた者(=筆者)にとっては、自分が吸ってきた空気について、その正体を探るには格好のシリーズである。
 この日記シリーズは、365日×5冊分あり、どこかには自分が当たり前にしていた思考をもう一度考えさせる、そんなページがあるはずである。当たり前に見過ごしてしまう問題を新鮮な角度から掘り起こしていくのが森博嗣の真骨頂であり、日常の何気ない瞬間にふとメスを入れる。この日記シリーズには、そんな森博嗣の逡巡(しゅんじゅん)が散りばめられている。どの年代から読み進めても問題なく、どこかで思考の落とし穴につまずくと思われる。例えば、最近の落とし穴は、日記シリーズ『ウェブ日記レプリカの使途』(幻冬舎文庫)の「3月5日」であった。

ところで、人と「会う」とは、どういうことなのか、とときどき考えます。人と会うと、その人の「抽象」を見られる気がします。具体的なものではなくて、です。どうも、日記やメールばかりで人を見ていると、具体的過ぎる傾向があるのです。「具体的な方が良い」と普通は思うかもしれませんが、それは少し違います。人間が人間を見るとき、最も働くのは「抽象的」な目なのですね。
 (128〜129頁)
 こうした一文に出会って、メールだらけの生活に想いをはせ、そもそも具体とは何か、抽象とは何か…、と思考の落とし穴にはまっている。まずは「F」を読むべきであろうが、森の深みにはまりたい方にはお勧めの一冊。

中村 玲太(親鸞仏教センター研究員)

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