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ブックレビュー(書評)
2016年3月
『現代哲学ラボ 第1号―入不二基義のあるようにありなるようになるとは?』
MIDアカデミックプロモーションズ

  編集/哲楽編集部、語り/入不二基義、森岡正博   

 東京に現代哲学への一つの窓が開かれた。その名も「現代哲学ラボ」。世話人は、森岡正博、田中さをりであり、永井均、入不二基義が賛同人として名を連ねている。田中によれば、「現代哲学の領域で哲学的な思索を発信している人たちが集い、次世代に哲学を伝える場を作り出す活動」(本書「はじめに」)だと言う。現代の哲学者と言われる人に、その思索を気兼ねなく話してもらいながらも、それをかみ砕きながら広く公開している。
 さて、そんな「現代哲学ラボ」の第1回目(2015年10月9日、於:早稲田大学戸山キャンパス)は、2015年に『あるようにあり、なるようになる――運命論の運命』(講談社)を上梓(じょうし)した入不二基義からの問題提起を軸に、森岡正博のコメントをはじめ白熱した議論が繰り広げられた。当日の「入不二ワールド」を忠実に再現したのが、電子書籍『現代哲学ラボ 第1号』である。

 「概念を動かしてみる」――これをプロローグとしてはじめる『あるようにあり、なるようになる』と同様、「現代哲学ラボ」にても、「運命論を書き換える」という入不二議論の中核が語られている。(1)現実論、(2)様相論、(3)時間論という三つの柱から、「全てのことは、あらかじめ決定されている。」、「起こることは必然的に起こる。」、「偶然に見えても、実は必然である。」と言った運命論が変形・移動され、入不二の運命論の輪郭が浮かび上がってくる。「運命論」と聞くと関心が向かない人もいるかもしれないが、入不二の議論は、徹底して「(相対/絶対)現実」、「偶然/必然」、そして「時間」の問題を論じたものであり、日常、何気なく接している世界の見方に変更を迫るような圧倒的な(ねちっこい!)思索が積み重ねられている。
 『あるようにあり、なるようになる』でも同じ議論をたどるのであるが、まず本書を読めば入不二の描く「主導線」がよくわかる。それだけではなく、森岡のコメントを着火剤として、新たな議論の予感を感じさせる入不二の言葉が生まれたのも本書の魅力の一つである。一例を挙げれば、入不二は、否定がありえない「現に」という現実性自体(これ自体は中身が「空っぽ(空虚=充実)」)を「絶対現実」と呼ぶが、それを語る視点について語った次の言葉が刺激的だ。

……「じゃあ絶対現実はどっから語られているのか」、「いや、どこからでもない」です。つまり人称性をもっていないですから、あるいは固有名的な現実でもないですから、そこに固有名を当てたり人称を当てたりすることによって、「誰からの視点」ということが成り立たない。あえて変な表現でいうならば、いわば絶対現実という外のないものが自らの内に自らを転落させて、局所化させて、現実自身が語っている。だから私っていう入不二が語っているのではなくて、これは現実自身が現実を語っている、……。(以上、本書「ディスカッション」よりの抜粋)
 本書には以上のような視点では収まらないものがあることも見逃せない。最後に田中さをりによる「はじめに」の一文を載せておきたい。

まったく勝手な解釈であろうが、「人を好きになったらとことん愛せよ、哲学はそれからでも遅くはない」というメッセージを、個人的には受け取ったのだった。

中村 玲太(親鸞仏教センター研究員)

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