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ブックレビュー(書評)
2016年11月
『そして生活はつづく』
  星野源 著    [文春文庫、2013]

 今や押しも押されもせぬスターである星野源が、2009年に出したはじめてのエッセイ集が『そして生活はつづく』(マガジンハウス)である(2013年に文春文庫より文庫化され、2015年には電子書籍化もされている)。星野源は言う。

たとえ戦争が起きたとしても、たとえ宝くじで二億円当たったとしても、たとえいきなり失業して破産してホームレスになってしまったとしても、非情な現実を目の当りにしながら、人は淡々と生活を続けなければならない。  (「そして生活はつづく」より)
 そんな「生活」が苦手、退屈ゆえに目をそらしてきた「残念な人」星野源が生活に悪戦苦闘するエッセイ集が本書である。苦闘する生活の内容は、とてもくだらない。自分の生活、そして自分自身に徹底的にメスを入れる軽妙な文体は、時に可笑(おか)しく、そして時に苦しい。星野源はこうも言う。

しかし大勢の人の前で芝居をして拍手をもらい、一万人の前で演奏して拍手をもらっても、一度家に帰ってひとりになると、そこにはあの小学生のときに感じた、とてつもない虚無感が変わらずに広がっていたのである。

私は生活が嫌いだったのだ。できれば現実的な生活なんか見たくない。ただ仕事を頑張っていれば自分は変われるんだと思い込もうとしていた。でも、そこで生活を置いてきぼりにすることは、もう一人の自分を置いてきぼりにすることと同じだったのだ。楽しそうに仕事をする裏側で、もう一人の自分はずっとあの小学生の頃のつまらない人間のままだったのである。(同上)
 何だって生活はつづく……恥ずかしながら、この当たり前のことにようやく目が向いたのは最近のことだ。「キチンとした生活習慣」ほど苦手なものはない。この「苦手」という言葉が安易に出てくるあたりがすでに逃げの姿勢である。「そういうのは性分に合ってないんだよね」と生活に向き合おうとしない。星野源のエッセイを読みながら、ふと「もう一人の自分を置いてきぼりに」していたことに気がついてしまう。
 仏道の探求とは、決して輝かしい星空を見上げて満足していることではないだろう。光に照らされて知らされるのは、足下に広がる虚しい生活である。ここから逃げもせず、居直りもしないのが浄土の教えであろう。
 話がそれたが、星野源『そして生活はつづく』は日常生活の虚無感や挫折感の正体を丹念にあぶり出しながらも、抜群にくだらないの中にある一冊。

中村 玲太(親鸞仏教センター研究員)

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