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ブックレビュー(書評)
2017年5月
『The Outsiders』(アウトサイダー)
  Colin WILSON(コリン・ウィルソン) 著    [集英社、1988年]

 コリン・ウィルソンが25歳にして書きあげた『アウトサイダー』(1956年)は、世界を究極的に否定するものは何か、そして究極的に肯定するものは何かを希求する人びとを論じた古典的名著である。団塊の世代に属する諸先輩方にとっては、まさに「青春の書」であったと聞くことしばしばである。

 すべてを一挙に呑み込む渾沌が襲い掛かった時、真に「自由」であるために如何にすべきかを考え抜いた強靭な精神の数々があった――ドストエフスキイ、ゴッホ、ニーチェ、カミュ、ヘミングウェイといった知性が織りなすのは、まさに「アウトサイダー」の思想史である。

「アウトサイダー」は、あまりに深く、あまりに多くを見通すのだが、その眼に映じるものは、本質において渾沌である。小市民(ブルジョワ)にとっては、世界はまず整然とした場所である。不合理で身の毛がよだつような不穏な要素もなくはないが、一途に現在にのみ気を取られている小市民は、それを無視していっても平気なのかもしれない。だが、「アウトサイダー」がアナーキーな感情を吐露することがあるとすれば、それはただ世間の見栄を思いきり侮蔑してやりたいという気持ちからだけではなく、どんな犠牲を払っても真理を述べねばならぬ、そうする以外に究極的な秩序の回復は望みえないという抜き差しならぬ思いからのことなのだ。たとえ前途に望みをかける余地が全くないとしても、真理は述べられねばならないというのだ。(拙訳)
 「アウトサイダー」を訳出せよといわれれば、自分は迷いなく「風狂」とする。その精神の結晶たる『狂雲集』をのこしたのは、一休宗純だった。世俗の秩序や体制を虚構的(フィクショナル)なものと見抜かずにいられない「風狂」は、高く悟って俗に入り込んでいく。それ故、一休はこうも喝破してのける――「庵に住むこと十日、意忙々たり、脚下の紅絲線(こうしせん)、甚だ長し。他日、君来たりて、もし我を問わば、魚行(ぎょこう)酒肆(しゅし)又た婬坊(いんぼう)」(『狂雲集』八五「如意菴退院寄養叟和尚」)――「大徳寺内の塔頭の如意庵に住しても、香銭が乱れ飛ぶ宗門は騒がしくてたまらん。もしワシに会いたければ、居酒屋やら淫売宿やらじゃ」と。室町期において、新興都市民の経済支援を得て立て直そうと奔走していた大徳寺を批判してやまない一休は、まさにこのとき「アウトサイダー」に他ならなかったろう。

***

 翻訳版としては、中村保男訳(集英社、1988年)がある。Religion and the Rebel, Houghton Mifflin, Boston, 1957(中村保男訳『宗教とアウトサイダー』河出書房新社、1991年)も、『アウトサイダー』での問題がより深められた好著である。コリン・ウィルソンの感性は、21世紀の今なお普遍的な問いを提示している。

飯島 孝良(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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