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ブックレビュー(書評)
2019年6月
『超歌手』
  大森 靖子 著
[毎日新聞出版、2018年]

 夏のど真ん中にありながらビーチのステージ上で陽光を蹴散らしていた。サマーソニック2017ではじめて見た大森靖子をいまでも鮮明に覚えている。

孤独をもっと尊重してくれ、尊重されない場所から逃げてライブに来たんだから、誰にもわからないだろうこの気持ちを肯定してくれ。孤独をさらに断絶しないでくれ。/私たちは孤独を否定して共存したいわけではなく、孤独と孤独同士がお互いを尊ぶことができる関係を望んでいる。 (大森靖子『超歌手』、「孤独力」より)

 大森靖子が2018年に上梓した『超歌手』のこの言葉をよく反芻している。「孤独」を描かねばならないのは、大森が『超歌手』で示すようにそれがどうしようもない人間の実相――「独生独死独去独来」と『無量寿経』で示される我々の実相なのであり、そしてそこから真に自由が生まれることを信じているからだ。しかも、大森は、単に〈自己の孤独〉を宣揚するだけではない。孤独と孤独同士が互いに尊重し合える、「個の尊重」を願い、歌で、言葉で苛烈に活動している。

 この「孤独力」の次には「光」という章が置かれている。冒頭にはこうある。

自分が孤独じゃないと孤独な一〇代の子に届けられないと言って孤独を自ら選んでいる若い女の子をみて、この子を誰もあなたが思う孤独で縛りつけないでほしいなと勝手に思ってる。/わざわざ選ばなくったって彼女の孤独は、というかすべての人間がそれぞれ守っている孤独は、すでに尊い、のだから、すべての局面でそう言いつづけるのを誰かが押しつけるのは絶対に違うよな。孤独と孤立は違うもの。 (大森靖子『超歌手』、「光」より)

 やや唐突な始まりではある。あえてこの前提になるものを探る必要もないのかもしれないが、おそらくこれは『Quick Japan』(2017年、135号)で、平手友梨奈が「自分が孤独を感じていないと、同じような気持ちを抱えている十代の子に届けられないんじゃないかなって。だからといって、無理に自分で自分を苦しめているわけでもないんですけどね。今、切ない思いをしている子に届けばいいなって思ってます。同じような気持ちでいる十代の子がどこかにいるっていうのは私にとって、すごく心強いんです」(64頁)という発言を受けてのことだと思われる。ちなみに、平手友梨奈が再度積極的に関わったと考えらえる「欅坂46 3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE」(日本武道館、2019年5月9日〜11日)は、「〇〇であれ!」という言葉すらほぼ見当たらない、現代の悲痛な呻きを吸い上げたような「孤独なモノローグ」と言ってもよいセットリストであった。……と書いていて自戒せねばと思うのだが、「あなたが思う孤独」を託しやすい存在になっているのは間違いないのであろう。
 いずれにせよこう照らし合わせると、大森はまさに実際の人に向けた――しかしそれを超えて普遍的な〈孤独〉に対して心底愛しむ言葉を語っているように思う。

 いま〈孤独〉を中心に見てきたが(実際『超歌手』の中心的な問いであるとは思うが)、これには止まらない、いやこうした孤独力から様々な世間の話題にも切り込んでいるのが『超歌手』である。苛烈な愛に満ちた一冊。

クズのまま光るんだよ。自分の理想の自分になるの待つほどの時間は、人生にはないんだから。 (大森靖子『超歌手』、「光」より)


中村 玲太(親鸞仏教センター嘱託研究員)

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