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ブックレビュー(書評)
2019年10月
『親鸞「六つの顔」はなぜ生まれたのか』
  大澤 絢子 著
[筑摩選書、1,500円+税]

 本書は著者が母校である東京工業大学に提出した博士論文「親鸞像の形成と展開過程」を下敷きにし、タイトルを「親鸞「六つの顔」はなぜ生まれたのか」として、一般読者向けに刊行されたものである。本書が示す、親鸞の「六つの顔」とは一体どのようなものだろうか。本書では、「人間親鸞」の顔を「如来の化身」「法然の弟子」「説法者」「本願寺の親鸞」「妻帯した僧」「『歎異抄』の親鸞」という六つの側面に設定し、中世・近世・近現代の時間軸の中において、人々が一体どのように「親鸞」を受け入れ、あるいは変容してきたのかを描き出そうと試みている。
 中世では絵巻物から「法然の正統な弟子である親鸞」、「教えを広めた説法者・親鸞」、「如来の化身・親鸞」といった親鸞像が伝承され、曾孫の覚如においては師資相承を表明する中で「本願寺の親鸞」を形成していく。近世になると肉食妻帯畜髪が厳しく禁じられた時代の中で、「妻帯の僧・親鸞」が庶民に浸透する。そして近代に至ると煩悶青年に支持される「『歎異抄』の親鸞」が生み出されていく。そうした『歎異抄』を通した親鸞像は大正期に至ると波紋を及ぼし、文学者、作家や評論家の中で「親鸞ブーム」をわき起こす。

 ところで、私は学部・大学院が全て宗門大学であり、いわゆる「親鸞」を学んできた者の一人である。真宗学・仏教学の領域で親鸞と接したことは、恐らく著者よりも長いであろう。また、僧侶でもあるため生活全般が「宗祖」や「聖人」の顔としての親鸞を讃えている。こうした日常は相も変わらぬことではあるが、ただ見方を変えると、私自身の中で親鸞を近くて遠い存在としてしまっている感が無いわけでもない。
 たとえば、大学や聞法会で『教行信証』などの「往相回向・還相回向」、「現生正定聚」、「三願転入」といった概念を学ぶ。そこには、難しい教理用語から「思想家(仏教者)」としてイメージされる親鸞の顔がある。ところが、本書のような歴史の伝承や大衆文化の中で語られる親鸞、もしくは愛される親鸞の顔は、そこには無い。ともすると私は、自分の信仰主体を思索する生活の中で、常に「親鸞の顔色」を伺っていたのであろうか。

 本書はそのような宗門人の私に対して、人間親鸞としての風穴を空けてくれた。「六つの顔」、換言すれば、これは著者の「研究眼」と捉えてもよいだろう。この六種の研究眼を機能させることによって、実像と虚像の狭間で揺れ動く親鸞像を炙(あぶ)り出し、宗祖や思想に硬直していた私の親鸞像に多様性を与え、丸裸にしてくれる。
 近年、「仏教的知識人」と近代仏教の研究者が口にするが、正しく著者はそのような存在に他ならない。そのような著者が成し遂げた仕事は、今後新たな「親鸞の顔」を、時代と共に生み出し続ける可能性を予見させる。

藤村 潔(親鸞仏教センター研究員)

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